「独創性は売上に直結しにくい」桜井政博氏、最後のゲームデザイナーズ大賞を『文字遊戯』に贈る
「残酷なことを言うと、独創性というものは売上には直接繋がりにくいこともありますが、独創性を失った業界というものは、ゆっくりと消えていくだけなのです」
これは、『星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』シリーズを手がけた桜井政博氏が、ゲームデザイナーズ大賞の最後の授賞にあたって寄せた統括コメントの一節。売れるかどうかと新しいかどうかは別の話だと、作り手の側から言い切っているんだね。それでも新しさを手放した先には衰退しかない、という結論で締めているところに、この賞を16年続けてきた人の重みがあるにゃ。
ゲームデザイナーズ大賞は2026年で役割を終えた
ゲームデザイナーズ大賞は、日本ゲーム大賞の中の1部門として2010年に桜井氏が立ち上げた賞。一般投票で決まる年間作品部門とは別に、トップクリエイター自身がプロの目で「創造性」と「斬新性」を基準に審査し、毎年1本だけを選んできた。目的は、売上やトレンドではなく「高い創造性を持ち、ゲームの歴史にその名を刻むべき斬新な作品」を評価すること。
一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は2026年9月8日、この賞が17回目となる日本ゲーム大賞2026での発表を最後に終了すると公式に発表した。最後の年の審査員は、審査員長の桜井氏に加え、飯田和敏氏、イシイジロウ氏、上田文人氏、神谷英樹氏、小高和剛氏、須田剛一氏、トビー・フォックス氏、外山圭一郎氏、三上真司氏、ヨコオタロウ氏の11名。顔ぶれだけ見ても、独自の作風で知られる作り手ばかりが並んでいる。
授賞式は9月15日に東京・有楽町のヒューリックホール東京で開かれ、桜井氏がプレゼンターとして登壇した。統括コメントの全文は、当日のCESAのプレスリリースに載っている。
独創性をテーマにして賞を与えることができるという点において、ゲームデザイナーズ大賞は人気票になりがちなゲーム大賞において別の評価軸を与えることができたと思っています。(中略)今までも新しい発明があって、開拓をした人がいたからこそ今の業界が成り立っていると思います。ゲームデザイナーズ大賞は、一度幕引きとなりますが、新しさや独創性、その作品にしかないものに目を向けていただけたら幸いです。
人気投票の結果と並べて、もう1本の物差しを置いておく。この賞が担っていた役割は、ほぼこの一文に集約されている。冒頭の「売上には直接繋がりにくい」という言葉も、だからこそ評価の場を別に用意する意味があった、という文脈で読むとすっきり入ってくるね。
授賞式の模様は、東京ゲームショウの公式チャンネルにアーカイブが残っている。
最後の1本に選ばれたのは、文字だけでできた『文字遊戯』
締めくくりの受賞作は、台湾のTeam9が開発した『文字遊戯』。登場人物も背景も、画面に映るものはすべて漢字やかなで組み立てられている。「道」の字が連なって道になり、「樹」と「木」が積み重なって木立になり、主人公は「我」の1文字として歩き回る。


文字はただの表示ではなく、遊びの道具そのもの。文中の言葉を消して意味を変えたり、単語を動かして事実を書き換えたりしながら先へ進む作りになっている。凍った雪が「硬く冷たい文字と化して」いて押しも引きもできない、といった具合に、地の文がそのまま仕掛けの説明を兼ねている場面もある。

桜井氏の授賞理由は次のとおり(日本ゲーム大賞2026のプレスリリースより)。
『文字遊戯』は、登場人物や背景なども含めてすべて文字で構成されており、昔のノーマルキャラクターで遊ぶPCゲームを彷彿とさせる作品です。 読み物として単純に文字列が並ぶのではなく、配置が情景やフィールドを表し、キャラクターのように動きます。 その中で主人公である"我"はテキストの意味や文脈、展開を改変して進みます。
独創性を第一に考えるゲームデザイナーズ大賞において明らかに他には見られない、一目で違いが判るこの作品は、タイトルを絞って行う第二次審査の得票数も圧倒的でした。
さらに驚くべきことは、日本語でしか成立しない内容に見えて、繁体字中国語からのローカライズ作品です。
生まれ難く、真似できない本作は、最後のゲームデザイナーズ大賞授賞にふさわしい作品だと考えます。
目を引くのは、最後の「生まれ難く、真似できない」という評し方。独創性を「新しい」だけでなく「他の誰かがなぞれない」ことまで含めて捉えている。漢字の形と意味を同時に使う仕掛けは、元が繁体字中国語で、それを日本語に移し替えたもの。言葉の意味でパズルを組んでいる以上、単に文章を訳せば済む話ではないはずで、移植の手間にまで触れているのはそのためだと思う。
日本語版はフライハイワークスの販売で、Steam版は2025年8月13日に配信された。価格は3,600円で、対応言語は日本語。
年間作品部門の大賞は『ぽこ あ ポケモン』が受賞し、同じ夜にもう1つの物差しが静かに役目を終えた。その最後の札は、文字を1つずつ動かして世界を書き換えるゲームに渡ったにゃ。
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