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WoWの仲間が人生を変えた話、ギルドで出会った妻からIbelinの墓前の集いまで

投稿: 2026/10/04by tobariware約9分で読めます
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『World of Warcraft』のエルウィンの森には、湖のほとりにひとつだけ墓石が置かれている。キツネが彫られたその石の前に、命日になるとたくさんのキャラクターが集まって、ろうそくを並べる。

眠っているのはゲームの登場人物じゃない。実在したプレイヤーのマッツ・スティーンさんだよ。

MMOで出会った誰かに人生を変えられたことはあるか――海外のMMOファンのあいだで、この問いがまた話題になっている。答えを集めてみると、結婚式の話もあれば、もう会えなくなった友達の話もある。「そんなものは無い」という声もちゃんと混ざっていた。

ギルド「Starlight」の仲間はマッツさんの葬儀に駆けつけた

マッツ・スティーンさんはノルウェーの人で、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを抱えていた。筋肉が少しずつ弱っていく病気で、2014年11月に25歳で亡くなっている。

Blizzardの親会社にあたるマイクロソフトの公式ニュースサイトの特集によると、マッツさんはWoWで「Ibelin」というキャラクターを演じ、ロールプレイを中心にしたギルド「Starlight」に入っていた。最盛期のメンバーは40〜50人ほど。入るにはキャラクターとしての面接とプレイヤー本人としての面接を両方受ける必要があったというから、かなり本格的なギルドだね。

家族は長いあいだ、マッツさんの暮らしは孤独なものだと思っていた。亡くなったあと、両親は本人が書いていたブログで死去を伝え、連絡先のメールアドレスを載せる。翌日から、ゲームの仲間たちのメッセージが次々に届きはじめた。ギルドのメンバーはお金を出し合って葬儀に参列し、いまも毎年の命日には、Ibelinがいつも走っていたルートをほかのプレイヤーと一緒にゲームの中でなぞっている。

この話は、ドキュメンタリー『イベリン: 彼が生きた証』(原題:The Remarkable Life of Ibelin)になった。2024年のサンダンス映画祭でワールド・ドキュメンタリー部門の観客賞と監督賞を受け、同じ年の10月からNetflixで配信されている。ゲームの中の場面はWoWそっくりのアニメーションで描き直してあるよ。

Blizzard側も、冒頭の墓石のほかに追悼の形を用意してきた。2024年末には、マッツさんのキャラクターと大切にしていた陶器のキツネをもとにしたペット「Reven」のセットを販売し、売り上げは全額、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの研究を支援する団体CureDuchenneへ寄付された(販売は2025年1月に終了)。WoWのエグゼクティブプロデューサーのホリー・ロングデールさんは、同じ特集でこう話している。

私たちは娯楽を作っている。でも、ときにはそれ以上のものになる。ゲームは人生を変えることがある。

(マイクロソフトの公式特集より・日本語訳)

Blizzard公式フォーラムには「ギルドで出会った妻」の話が何度も出てくる

マッツさんの話は特別だけど、もっと身近な形で人生が動いた人はたくさんいる。BlizzardのWoW公式フォーラム(北米)を「met my wife(妻と出会った)」で検索すると、2019年から今年まで、何年にもわたって同じ告白が繰り返し出てくるにゃ。

妻とはここで出会った。いちばん長く付き合っている友達の何人かもここで知り合った。

(2023年1月・WPMac/「Well GD ... I'm 40!」スレッドより・日本語訳)

16年やってる。妻とも同じ流れで出会ったよ。

(2022年6月・HellRoid/「How do I find love?」スレッドより・日本語訳)

ゲームで知り合った人と現実で会ったかを聞いた2019年のスレッドでは、話がさらに具体的になる。

今の親友のひとりは、WotLKのころに一緒にギルドマスターをやっていた相手だ。高校時代の友達は、ギルドの仲間と結婚した。

(Tethmes)

サービス開始からWrathの終わりまで、ある男とがっつりレイドをしていた。大学に進んだら、そいつの家から20分の場所に住むことになった。今でも友達だよ。

(BoredStudent)

3年来のギルド仲間3人に会うために、国の端から端まで飛行機で飛んだ。今でもいい友達だ。

(Tubbis)

(いずれも2019年6月/「Have you made friends IRL with players you met in WoW?」スレッドより・日本語訳)

シアトルでギルドのオフ会を開いたという人や、昔のレイド仲間に結婚式の写真を撮ってもらったという人もいた。WoWの拡張パッチの名前が「あのころ」を指す目印として普通に使われていて、10年、15年という時間の重さが伝わってくる。

マッツさんの話をきっかけに書かれた投稿もある。2025年9月に立った「Is there a Ibelin, in your life?(あなたの人生にもIbelinはいる?)」というスレッドで、ラテンアメリカのプレイヤーFakewerkさんが友人のことを書いている。

Cataclysmのころに知り合ったRakzorというキャラクターの持ち主で、遊び方は自分が教えた。2010年当時、仲間の多くは家にPCが無く、アカウントは自分のものでもネットカフェに集まって遊んでいたという。その友人は事故で入院し、病院で感染症にかかって亡くなった。知らせは、仲間うちのWoWのグループに友人の兄弟から届いている。

あとで彼のキャラクターを調べたら、The War Withinまで買ってあった。遊ぶつもりだったのに、その機会は来なかった。

(2025年9月・Fakewerk/「Is there a Ibelin, in your life?」スレッドより・日本語訳)

Fakewerkさんは、ハウジング機能で友人が好きだったドレナイのパラディンの像を置けたら、自分の家に彼の墓を作りたいと続けている。すぐ下には「どのハウジングの土地にも、自分で名前を刻める小さな墓地があればいい」という返信が付いた。冒頭の墓石と同じ発想が、プレイヤーの側からも出てきているわけだね。

自動マッチングで組んだ相手の名前は「1人も覚えていない」という反論も

もちろん、全員がMMOで一生の友達を作っているわけじゃない。2022年、自動マッチング(RDF)が無い環境で、手動で組んだパーティーからどれだけ友達ができたかを聞いたスレッドでは、はっきり意見が割れた。

たくさん。活発なギルド3つぶんくらい。

(Dorky)

ゼロ。何も無い。「人との交流」なんて嘘だよ。みんな頭の中はAFKのままだ。

(Bergtau)

1人も。一緒に組んだ相手の名前なんて、ひとつも言えない。

(Jimbox114)

(いずれも2022年10月/「How many friendships have you made solely due to No RDF?」スレッドより・日本語訳)

「ネットではもう誰とも深く関わらない。雑談はしても友達にはならない」と書いた人もいる。出会いの多さを決めているのは、ゲームの仕組みよりも、遊ぶ人がどこまで踏み込むかのほうなのかもしれない。

その仕組みの側も、いままた動いている。Blizzardは、初期のアゼロスをもとにした新しい世界『World of Warcraft: Forever』を11月5日午前8時に始めると発表した。WoWの月額料金(ゲームタイム)だけで遊べて、ベータテストはいまも続いている。公式が掲げた一文は「見慣れた道が新しい発見につながり、旅は目的地と同じくらい大事になる」。

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