久夛良木健氏、電通大CERECの開所式で「ゲームは次の段階への変わり目」と語る
「映像はこれだけ進化したのに、ゲームの作り方そのものは初代PlayStationのころから変わっていない」。PlayStationの生みの親として知られる久夛良木健氏が、学生と業界関係者を前にそう話した。
舞台になったのは、東京・調布の電気通信大学が9月29日に開いたエンタテインメント創造研究教育センター(CEREC)のオープニングセレモニー。久夛良木氏はこの大学の特別客員教授として、村松正和学長と並んでパネルディスカッションに登壇している(電気通信大学のイベント告知)。
電通大CERECはAIも医学も横断する
CERECは、ゲームを中心にしたエンタテインメントを工学・理学の側から研究し、教え、社会に実装していくための拠点だよ。大学の発表によれば、扱う分野はAI、VR、ヒューマン・コンピュータ・インタラクション、材料工学、半導体、ロボティクス、医学・心理学までと幅広い。ゲームが「多くの技術が融け合ってできているもの」だからこそ、ひとつの学部に閉じない形にしたみたいだね(発足を伝えるプレスリリース)。
センター長は野嶋琢也准教授。運営には日本芸術文化振興会の「文化芸術活動基盤強化基金」によるクリエイター等支援事業が使われていて、セレモニーでも同振興会の審議役が来賓としてあいさつした。発足が公表されたのは9月9日で、開所式はそこから3週間後の開催になる。
当日のプログラムは2本のパネルが軸になっている。
- パネル1「大学とゲーム業界の本音。これからの大学に期待すること」=村松正和学長、久夛良木健特別客員教授
- パネル2「電通大卒業生が語る、電通大生の強み」=栗原洋輔氏(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、帆山遼氏(コーエーテクモゲームス)
会場は200人の定員で、学生や教職員だけでなく企業・一般にも開かれた催しだった(CEREC Opening Ceremony)。

久夛良木氏がまず持ち出したのは市場の大きさだった。ゲームソフトだけで約30兆円規模になり、音楽や映画を含めたコンテンツの中で最大の領域になっている——という整理だね。
ただ、そこから「もう伸びきった産業」という話にはならない。久夛良木氏は、ゲームはまだ大きく化ける余地があり、いまは次の段階へ進む大きな変わり目に来ているという見方を示した。
その根拠として挙げたのが、冒頭の指摘。グラフィックスは大きく進化した一方で、コンテンツそのもの、つまり「何をどう作るか」の部分には停滞を感じていて、その作り方は自らが率いた初代PlayStationのプロジェクトから本質的に変わっていない、という。家庭用ゲーム機に3Dを持ち込んだ当人の口から出ると、言葉の重みがだいぶ違うにゃ。
初代PSは新チップで世界変革に挑んだ
では、何が変わるべきなのか。久夛良木氏は初代PlayStationの開発をふり返り、あのプロジェクトは「世界を変えること」を目指して、エンジニア・アーティスト・デザイナーの第一線を集めたものだったと語った。
3次元CGをリアルタイムで処理し、入力にも即座に応える。ゲームが要求するそうした条件に応えるために、新しいチップや技術そのものを作っていった——というのが当時の話の軸になっている。そこから導かれるのが、かつてのゲーム業界は世界最先端の技術を追いかけるのではなく、生み出す側だったという主張。会場の学生と業界の人たちには、同じ姿勢で仕事に向き合ってほしいと求めた。
AIの話題にも触れていて、人間がAIに使われる側に回ってはいけない、これから求められるのはAIの進化そのものを引き起こせる人だ、という趣旨の発言もあった。村松学長も「AIに使われる人間になってはいけない」と、同じ方向の考えを示している。
学生に向けていちばん強く語ったのは、好奇心を手放さないことだった。
久夛良木氏の説明はこうだ。人の脳の神経のつながりは生まれたときがいちばん多く、成長して同じことを繰り返すうちに、要らないとみなされたつながりが少しずつ切れていく。だから、好奇心をなくして「こんなもんだろう」と思った瞬間に、そこで終わってしまう——。ゲームに限らず、あらゆることに興味を持ち続けてほしいという呼びかけで、いつまでも少年・少女のままでいてほしい、という言い方もしていたようだね。
続く2本目のパネルでは、ゲーム会社で働く卒業生2人が、大学で身につけた基礎が仕事で生きていることや、「好きなことを突き詰められる」校風を電通大の強みとして挙げていた。
PlayStationを生んだ人が、30年あまり経ってゲームを研究する大学の拠点の開所式で口にしたのは、技術の話より先に「飽きずに面白がり続けること」だったにゃ。
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