集計に載らない解雇——ゲーム業界の契約労働者と、開いた支援基金
2026年にゲーム業界で職を失った人数を追っている有志の公開集計は、7月1日時点で およそ4,600人/閉鎖・解散したスタジオ22社 という数字を出している(Video Game Layoffs)。この集計は、公表された発表やスタジオからのアナウンスを一件ずつ積み上げて作られているものだ。
裏を返せば、発表されない削減はここに入らない。そして業界には、そもそも発表されないまま人が減っていく層がある。QA、ローカライズ、アート外注——契約や業務委託で回っている工程にゃ。
28%、33%、そして48%
GDCの主催者が2026年1月29日に公開した業界調査「2026 State of the Game Industry」は、2,300人超の業界人からの回答をまとめたものだ。数字を並べるとこうなる。
| 項目 | 割合 |
|---|---|
| 過去2年間にレイオフされた | 28% |
| 同・米国在住の回答者に限ると | 33% |
| 直近12か月に勤務先でレイオフがあった | 約50% |
| AAAスタジオ勤務者のうち、社内でレイオフがあった | 約2/3 |
| レイオフ後、まだ次の職を得られていない | 48% |
| 将来の就職見通しに不安があると答えた学生 | 74% |
理由として挙がった上位は組織再編(43%)、予算削減(38%)、市況(38%)、プロジェクト中止(32%)。売上が落ちたから、という単純な話ではない(GDC公式)。
同じ調査では、回答者の 7%がコンサルタントや個人事業の契約者、さらに4%が専業、4%が兼業の個人開発者だった。契約者・コンサルタント・個人開発者のうち 35%は週30時間未満の稼働にとどまっている。フルタイム換算では見えない働き方が、それなりの厚みで業界を支えているということになる。
発表される削減と、されない削減

大手の削減は数字として記録される。7月6日に発表されたXboxの人員削減について、CWAは翌7日の声明で、id Software、Bethesda Game Studios、ZeniMax Online Studiosを含む部門で1,600人が対象になったと述べている。同組合には2022年以降、Microsoft傘下で3,500人以上が組織されている(CWA)。声明の中でCWA第2-13地区のMike Davis副委員長は、団体交渉の議題として退職金や社内配置と並べて「ベンダー契約に関する決定」を挙げた。
ここが契約労働者の置かれた位置をよく表しているにゃ。発注元がスタジオ内部を削るとき、同時に外注契約も打ち切られる。契約が切れた側の会社で起きる人員整理は、発注元のレイオフ発表には一行も載らない。開発受託大手のVirtuosが2025年7月にアジア200人・欧州70人の計約270人(全社員の約7%)を削減した際、同社は「業界の構造的な変化による稼働率の低下と需要の鈍化」を理由に挙げていた。受託側は、契約が薄くなればそのまま人員に跳ね返る構造なわけだ。
基金の対象欄に「契約」「フリーランス」が並ぶ

そのうえで、2026年7月に動き出した具体的な仕組みがある。北米のゲーム労働者が直接加入できる組合 United Videogame Workers–CWA(Local 9433)が立ち上げた Game Worker Hardship Fund だ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象地域 | 米国・カナダ |
| 対象期間 | 2024年1月〜現在の影響 |
| 対象者 | AAA/モバイル/小規模スタジオの正社員・パートタイム・契約社員、仕事を失ったフリーランスや受託者、直接解雇されていないが影響を受けた人 |
| 組合員資格 | 不要 |
| 支給額 | 1,000ドル未満/1,000〜5,000ドルの2区分 |
| 用途 | 食費・医療費・家賃など生活費 |
| 原資 | 組合費、およびitch.ioのチャリティバンドル収益 |
対象者の欄に何が書かれているかを読むと、いま誰が抜け落ちているかがそのまま分かる。「直接解雇されていないが影響を受けた人」まで拾いに行くという設計は、契約が細っただけで生活が立ち行かなくなる層が現に存在する、という前提からしか出てこないものだ。申請と条件は公式ページにまとまっている。
原資の一部となるチャリティバンドルは『Demonschool』の Necrosoft Games が取りまとめ役で、6月10〜24日の募集に 145作品が集まった。売上は全額この基金に回る(itch.io)。
組合が並べた7項目
同組合が公式サイトで掲げている要求は、次の7つ。
- 短期的な大量採用と大量解雇の繰り返しではなく、持続的な成長
- レイオフの事前予告
- レイオフ後の有給期間
- 退職金の改善
- 解雇された労働者への健康保険の延長
- リコール権(再雇用時に、解雇された人を優先する)
- 生成AIを使うかどうかの判断に対する労働者の関与
2025年3月のGDCで結成されてから1年、2026年3月のGDCでは業界横断の「Game Workers' Bill of Rights」の草案が示され、オンラインの Game Workers Conference(5月22〜23日)も開かれた(CWA)。
要求リストの上から2つが「事前予告」と「解雇後の有給」であること自体が、いまの標準がどうなっているかを示している。そして契約や業務委託で働く人は、その要求の射程にすら入っていないことが多い。基金が組合員資格を問わない設計になっているのは、たぶんそのためにゃ。
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