Switch 2版『時のオカリナ』にモノリスソフトが参加、開発陣は水の神殿を28年ぶりに作り直した
28年前、青沼英二氏が自分で作って「難しすぎる」と言われ続けた水の神殿。Switch 2版の『ゼルダの伝説 時のオカリナ』で、その作り直しを任されたのは、ほとんどが『ブレス オブ ザ ワイルド』以降にシリーズへ加わった開発陣だった。
11月5日の発売に合わせて、制作に関わった顔ぶれが少しずつ見えてきている。ひとつはモノリスソフトの参加が公式に明らかになったこと。もうひとつは、任天堂が11月2日と3日に4回に分けて公開した「開発者に訊きました」だ。青沼氏、共同プロデューサーの藤林秀麿氏、ディレクターの伍学偉氏ら6人が、何を変えて何を残したのかを話している。
モノリスソフトは発売に合わせて、自社のXアカウントで参加を告知した。担当したのは「ゲームデザイン、プログラミング、グラフィックの部分受託開発」で、どの場面やどの要素を手がけたのかまでは書かれていない。
発売前には、海外の量販店の商品ページに開発元としてモノリスソフトの名前が載っていたことがあった。そのときは任天堂からもモノリスソフトからも説明が無かったけれど、今回の告知で参加がはっきりしたことになるね。ただ、開発の中心は任天堂の企画制作部 第3プロダクショングループで、インタビューに出てきたディレクター、アートディレクター、サウンドディレクターもこのグループに所属している。モノリスソフトはその開発を3つの分野で支えた、という位置づけだ。
40周年、若手に『時のオカリナ』の原点を
なぜいま作り直すのか。インタビューの第1回で、青沼氏はシリーズ40周年を迎えて何を作るべきか考えていたと話している。いまの開発メンバーには比較的新しい作品しか経験していない人も多く、その人たちが『時のオカリナ』のゲーム構成や開発の進め方を知ることが、これからの作品づくりで何かに気づくきっかけになるかもしれない、と考えたそうだ(開発者に訊きました 第1回)。

そのためプロデューサーの2人は、あえて一歩引いて見守る形をとっている。青沼氏は「変えたいと思ったところは、どんどん変えてくれていい」くらいの気持ちでいたという。藤林氏は「変えるところ」と「変えないところ」を最初に決めておくよう、現場に伝えていた。
基本方針を出したのはディレクターの伍氏だ。シリーズに加わったのは『ティアーズ オブ ザ キングダム』からで、高校生のころにNINTENDO 64で原作を遊び、大きな衝撃を受けたと振り返っている。伍氏が掲げた方針は次のとおり。
「原作から見た目は変わっても、体験は変えない」という方針のもと、『時のオカリナ』を今の技術で再構築(リビルド)することにしました。
開発者に訊きました 第2回より
アートディレクターの信太文氏はこのプロジェクトに入ってから初めて64版を遊び、プログラムディレクターの田口弘貴氏も発売当時は遊んでいなかった。原作を知り尽くしたベテランが方向を決めるのではなく、初めて触れる人の目も入れて作り直した、ということになる。
ワープ地点は試して全部消した
面白いのは、いちばん原作を知っている青沼氏が「変えたい」と言い出し、そして自分で取り下げた話だ。64版では普通に走るより回転アタックのほうが少しだけ速いので、ハイラル平原をでんぐり返しで移動していた人も多い。それをなんとかしようと、青沼氏は原作には無いワープ地点を試しに入れてもらった。
ところが遊んでみると、道中で「あれ、これは何だろう」と足を止めて得られる発見が無くなってしまったそうだ。結局ワープ地点はすべて外され、青沼氏は「そこは考えたうえで『変えなかった』ポイント」と話している。移動の不便さは、回転アタックのあとにボタンを押し続けるとダッシュになる操作で補われた。
フィールドも同じ考え方で作られている。『ブレス オブ ザ ワイルド』のようなシームレスな地続きにはせず、あえてマップを切り替える形を残した。デクの樹サマのそばにコキリの森があり、森を抜けると平原が広がる。新しいエリアに入る瞬間のわくわく感を残すため、という理由だ。

アート面のキーワードは「人形劇っぽさ」と「特撮っぽさ」。最初にリンクとゼルダのスケッチを描き、続いて葉や樹皮の質感まで作り込んだデクの樹サマの3Dモデルを作って、この世界に原作のキャラクターが自然になじむかを確かめたという。

水の神殿、28年越しの宿題に挑む
第3回では、ダンジョンとボスの話が出てくる。水の神殿は青沼氏が原作で自ら作ったダンジョンで、攻略の難しさがたびたび話題になってきた。本人は「28年前の宿題」と呼んでいる。
水中にいること自体の楽しさを伝えたかったものの、構造が複雑なうえにアイテムの切り替えが多く、何度もメニューを開いているうちに自分の位置や向きが分からなくなる。それが原作の問題点だったと青沼氏は振り返る。Switch 2版ではアイテムを切り替えやすくしたうえで、方角を見失う原因になっていた壁を格子状に変え、向こう側に部屋があることが見えるようにした。簡単にしたのではなく、迷わないように作り直した、という説明だ。
ボスでは最初に戦うゴーマが例に挙がっている。原作では弱点を狙うタイミングが分かりにくかった。そこで、頭の上の2本の腕で弱点をガードさせ、攻撃が効かない時間がひと目で分かるようにしたという。田口氏はこの変更を、「本質を変えずに新しくする」やり方が初めてつかめた瞬間だったと話している。
新しく加わった「時の軌跡」は、冒険の補助と、絵本のようにストーリーをたどる機能を合わせたもの。物語を進めるたびに絵と文章が解放され、最後には1枚のタペストリーになる。伍氏は、子どものころに原作を遊んだ親が、自分の子どもと一緒に話題にできるきっかけを作りたかったそうだ。

第4回は音の話が中心になっている。BGMは150曲以上あり、生演奏のフルオーケストラで収録した。ただ、すべての曲を壮大にしたわけではない。素朴な曲は楽器を絞って素朴なまま残し、一部の曲には64版の音源をもとに忠実に再現した音を混ぜている。藤林氏は「家の中」のBGMを最初に聴いたとき、「本当にこれでいくの?」と思わず聞いてしまったそうだ。
カットシーンはフルボイスになった。日本語版では声優の名前を伏せ、声だけを聞いて「原作のイメージにいちばん合う声」を選ぶオーディションを行っている。その結果、ひとりは64版と同じ声優が選ばれていた。誰なのかは明かされていない。
青沼氏は第4回の最後に、できあがった作品について「とにかく豊かになっているんです」と話している。原作と比べてどちらが上という話ではなく、自分の想像を良い意味で裏切るものになった、という意味だ。若い開発陣にシリーズの原点を知ってほしいという動機で始まったリメイクは、その原点を作った本人の宿題まで片付けて、11月5日に発売された。
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