Steamのウィッシュリスト1件で売れる本数がほぼ半減、160作の発売データから
発売日の時点でウィッシュリストが1万件あるゲームは、最初の1か月で何本売れるのか。2020〜2022年に発売された作品の中央値を当てはめると、およそ4,500本になる。同じ1万件でも2023〜2025年の発売なら、およそ2,200本まで下がるんだ。
この数字を出したのは、Steamで売るためのマーケティングを解説しているクリス・ズコウスキー氏。自身のブログ「How To Market A Game」で10月13日に公開した分析「Wishlist inflation is real, but you still need them」で、ウィッシュリストの「インフレ」が実際に起きていると結論づけた。
発売1か月の売れ行きは0.45本から0.22本へ落ちた
元になったのは、読者の開発者から集めたSteamの販売本数とウィッシュリスト数のデータ。2020〜2025年に発売された160本ぶんで、内訳は2020〜2022年の発売が34本、2023〜2025年の発売が126本。2026年の発売分は、発売後の期間がまだ足りないので外されている。
比べたのは、発売時点のウィッシュリスト1件あたりに何本売れたか、その中央値だよ。
| 発売からの期間 | 2020〜2022年の発売 | 2023〜2025年の発売 |
|---|---|---|
| 1か月 | 0.45本 | 0.22本 |
| 6か月 | 0.82本 | 0.43本 |
| 1年 | 0.99本 | 0.70本 |
最初の1か月でちょうど半分前後になっていて、ズコウスキー氏も「ばらつきが大きいので幅はある」と断ったうえで「約半分」と表現している。1年たつと差は少し縮まるものの、それでも0.99本と0.70本。昔なら1年かけてウィッシュリストとほぼ同じ数だけ売れていたのが、いまは7割ほどにとどまる計算にゃ。
星ボタンとフェスの増加が、登録を軽くした
なぜ1件の重みが下がったのか。ズコウスキー氏は理由を3つ挙げている。ただし、どれもデータで証明されたものではなく、本人の見立てという位置づけだ。
1つ目は、Valve自身が登録を簡単にしてきたこと。いまのSteamでは、ゲームの画像にカーソルを合わせると出てくる小窓の隅に星のボタンがあり、ストアページを開かなくてもウィッシュリストに入れられる。中身を読み込む前に押せてしまうので、ウィッシュリストは「買う予定のリスト」というより「ブックマーク」に近いものになった、というのが氏の見方だね。

Valveが開発者向けのSteamworksブログで2021年に出した記事「Steam Next Fest continues to boost engagement and sales for most games in 2021」には、Next Fest期間中のウィッシュリスト増加率をまとめたグラフが載っている。2020年夏から2021年10月までの5回を通した中央値は1,364%で、Valveがフェス経由でウィッシュリストを積み増す流れを後押ししていたことが分かる。
2つ目はフェスティバルの数そのもの。Valveが2020年にイベントを作る仕組みを整えて以降、Steam上のテーマ別フェスに並ぶゲームは急増した。ズコウスキー氏の集計では、1か月あたりにどこかのフェスへ載ったゲームは2020〜2022年ごろは多くても2,000本前後だったのが、2025年以降は3,000〜4,000本を超える月が珍しくない。フェスで目に留まって入れたウィッシュリストは購入につながりにくいのでは、と以前から疑っていたとも書いている。

3つ目は、開発者の側が賢くなったこと。ウィッシュリストの大切さが広く知られ、Next Festへの参加のように「無料で積める」基本の手を、ほとんどの開発者が打つようになった。全員が数を積み上げた結果、1件あたりの価値が薄まったという構図だよ。
売上を読む物差しとしては、まだ使える
ここまでだと「もうウィッシュリストは当てにならない」と読めそうだけど、分析の後半はむしろ逆の話になっている。
ウィッシュリスト数と発売1か月の販売本数の関係を時代ごとに測ると、決定係数(R²・両対数)は2020〜2022年が0.77、2023〜2025年が0.72。順位の相関(スピアマン)も0.89と0.87でほとんど変わらない。0.05の差はこのサンプル数ならノイズの範囲だ、とズコウスキー氏は見ている。1件で売れる本数は減ったけれど、ウィッシュリストが多いゲームほど売れるという関係は崩れていないわけだね。

発売直前の勢いにも目を向けている。発売前30日間に増えたウィッシュリストの数で売上を予測した場合、R²は2020〜2022年が0.77、2023〜2025年が0.70で、総数で見たときを上回らなかった。全期間をまとめると、総数が0.73、直前30日の増加数が0.72、直前7日の増加数が0.68。総数と直前30日の増加数を組み合わせると0.75で、わずかに精度が上がる程度にとどまる。
「ウィッシュリストは完璧ではないが、何本売れるかは予測できる」。分析はそうまとめたうえで、これからも数えて、集めて、話題にし続けるしかないと締めている。物差しの目盛りが縮んだだけで、物差しそのものは捨てられないということにゃ。
調査のフォームは今も開いていて、過去6年のうちにSteamでゲームを発売した開発者からデータを集め続けている。古い時代の34本というサンプルが増えれば、0.45本と0.22本の差がどこまで確かなものかも、もう少しはっきりしてくる。
関連記事
Steamで所有済みのゲームはウィッシュリストに入らない――「ギフト用リスト」の要望がRedditで伸びる
買った瞬間、そのゲームはウィッシュリストから外れる。セール中に友達へ贈りたいだけなのに追いかける手段が無い――r/Steamのそんな一言に、SteamDBやIsThereAnyDealへ逃げた人たちの声が集まったにゃ。
Steamの登竜門「人気の近日登場」掲載条件が急に厳しく─インディーの生命線に新機能
わずか数千のウィッシュリストで狙えたSteamの露出枠「人気の近日登場」。その基準が一気に跳ね上がったとアナリストが指摘し、小規模インディーの発見性に影を落としている。代わりの生命線として注目が集まる新機能とは。
Steamがウィッシュリスト済みの作品をおすすめに出す? Redditで共感の声
欲しいものリストに入れた作品が、Steamのおすすめ欄にまた出てくる。r/Steamに投稿されたこのぼやきに、「むしろ信頼できる推薦だ」「別の機種で持っている」と声が集まったにゃ。

コメント (0)
最初のひとことをどうぞ🐈
感想でも「わかる」の一言でも大歓迎。あなたのコメントがこのページの一番乗りです。