ゲームの更新はなぜ数十GBになるのか Steamの1MB差分と『HELLDIVERS 2』の容量削減
バランス調整と不具合修正だけのはずなのに、Steamのダウンロード欄には数十GBの数字が出ている。『HELLDIVERS 2』や『ARC Raiders』を遊んでいると、そんな場面に出くわすことがあるにゃ。
Redditのr/Steamでも「HelldiversやArc Raidersみたいな最近のゲームは、どうしてアップデートがゲーム本体と同じくらいの大きさになるのか」という投稿が上位に上がり、理由をめぐってやり取りが続いた。答えの大半は、Steamが更新をどう配っているかと、ゲーム側がデータをどうまとめているかの組み合わせにある。
Steamの配信システム(SteamPipe)は、ファイルを丸ごと送り直しているわけではない。Valveが開発者向けに公開しているSteamworksのドキュメントには、仕組みがこう書かれている。
Steamworks ドキュメントより(日本語訳・一部抜粋)
- SteamPipeはまず、各ファイルをおよそ1MBのチャンクに分割する
- 各チャンクは圧縮・暗号化されたうえで、Steamのコンテンツ配信システムへアップロードされる
- 更新時は以前のビルドと一致するチャンクを再利用し、新しいチャンクだけをクライアントがダウンロードする
つまり、変わった部分だけを1MB単位で拾う差分方式。理屈どおりなら、小さな修正のダウンロードは小さく済むはずだよ。
ところが多くのゲームは、テクスチャやモデル、音声といった素材を数GB〜数十GBの大きな「パックファイル」にまとめて持っている。差分が膨らむのは、このパックファイルの組み方しだいだね。
目次の8バイトが差分を半分に膨らませる
同じドキュメントは、差分が膨らむ典型的な例も挙げている。パックファイルの中に素材の位置を示す目次があり、その位置を「ファイル先頭から何バイト目か」という絶対値で記録していると、途中の素材が少し大きくなっただけで、それより後ろにある素材の位置が全部ずれていく。
位置の記録そのものは4〜8バイトの数字にすぎない。それでも1か所書き換わればそのチャンクは「新しい1MB」として扱われるので、ドキュメントでは「少数の素材を変えただけで、ファイルの半分以上をダウンロードし直すことになる」ケースまで紹介されている。素材の並び順を入れ替える、ファイル名やビルドの時刻を素材ごとに埋め込む、素材をまたいで圧縮をかける、といった作り方も、変更を広い範囲へ散らす原因になるそうだ。
そのうえで、Valveは開発者向けにこう勧めている。
Steamworks ドキュメントより(日本語訳・主な項目だけ)
- パックファイル内の素材の変更は、できるだけ局所的にとどめる
- パックファイル内の素材の並び順を入れ替えない
- パックファイルの大きさは、1〜2GBあれば十分
- 素材はレベルや機能ごとに別のパックファイルへ分け、更新では既存のファイルを書き換えるより新しいパックファイルを足すことを検討する
- 素材ごとに元のファイル名やビルドの時刻を含めない
Unreal Engineについての記述もあるよ。バージョンによっては素材の配置をそろえる詰め物(パディング)の取り方が原因で、新しいビルドのたびに素材の位置が連鎖的にずれることがある。対策として、パディングをSteamの差分と同じ1MB単位にそろえる設定(`-patchpaddingalign=1048576 -blocksize=1048576`)が案内されている。Unreal Engine 5で作られた『ARC Raiders』のような作品で更新が重くなるかどうかも、エンジンそのものより、こうしたパッケージの設定しだいということになる。


10月の2.0アップデート「Frozen Trail」では、新マップや巨大機械Emperorといった大きな追加が入っていた。こういう回は、差分の取り方と関係なくダウンロードそのものが大きくなる。

「回線は速いのに更新が終わらない」という不満にも、ドキュメントの中に答えがある。SteamPipeは既存のファイルを直接書き換えず、古いファイルの横に新しいファイルを丸ごと組み立ててから、最後に古いほうと入れ替える。
ドキュメントに出てくる例では、25GBのパックファイルを更新するときは、変更がたった10バイトでも新しい25GBのファイルを作り直す。変わっていない部分は古いファイルから写すとはいえ、ほぼ25GBぶんの読み書きが手元のストレージで起きる。ストレージによっては非常に時間がかかる、とValve自身が書いているくらいだにゃ。
更新中に「ダウンロード」の後で「ディスク割り当て」や「検証」の表示が長く続くのはこの工程で、ここは回線速度ではなくストレージの速さと空き容量が効いてくる。
『HELLDIVERS 2』PC版154GB、原因は重複データ
r/Steamの投稿で名前が挙がった『HELLDIVERS 2』は、更新の大きさとは少し別の形で、容量の問題を抱えていた作品だよ。
Arrowhead Game Studiosは2025年10月の公式の技術ブログ第1回で、PC版のインストール容量が約150GBと家庭用ゲーム機版の約3倍になっていること、その原因が「データの重複」にあることを説明した。HDDは読み取りヘッドがディスク上を移動する時間がかかるので、素材を使う場所の近くにわざわざ複製して置き、ロードを速くしていた。SSDならこの工夫はほぼ不要で、家庭用ゲーム機版では重複させていない。
2025年12月の技術ブログ第2回では、重複を完全に取り除いたことで、PC版のインストール容量が約154GBから約23GBへ、約131GB(約85%)減ったと発表された。HDDで遊んでいるプレイヤーは直近1週間で約11%。ミッションのロード時間は、最も悪い場合でも数秒伸びた程度だという。ロード時間を決めているのは素材の読み込みではなく、主にレベルの生成だったことも分かったそうだ。
この軽量版は当初、ベータブランチ「prod_slim」で配信されていた。その後、Arrowheadは2026年3月のパッチ「6.1.0」に合わせて従来の大容量版をSteamから外すと告知し、軽量版に一本化している。
空き容量10%ルールは今も有効
スレッドでは、まず「多くのファイルを書き換えているから」という説明が出て、そこから空き容量の話へと進んでいった。
大型アップデートは、ゲームのファイルを大量に書き換えたり置き換えたりしている。ストレージの空きを最低10%は残しておけ、という昔からの助言が今でも通用する理由のひとつだね。理由は昔と変わったけど、今でも正しい。
少なくともWindowsを入れたドライブなら、10%ルールは必ず守ったほうがいい。超えると一時ファイルがおかしくなって、動作が遅くなったり変な不具合が出たり、クラッシュしたりし始める。
古いファイルの横に新しいファイルを組み立てるSteamの方式を考えると、更新のために空き容量を残しておけという助言は理にかなっている。
一方で、速い回線を持っている人からはこんな体験談が出た。
5Gbpsの光回線を使っている。『BF5』と『Crimson Desert』でどちらも30GBくらいの更新があって、30分かかったうえに止まったように見えた。2回とも、アンインストールして入れ直したら7分で終わった。
これに対して、回線速度とは別の問題だと返す声も。
回線の最高速度は、更新にかかる時間とあまり関係ない。効いてくるのはダウンロードの段階だけだからね。実際の更新処理の速さは、開発者が使っているファイル構造とパッチの当て方がどれだけ効率的かで決まる。
入れ直しが速かったのは、組み立て直しのための大量の読み書きを飛ばせたからとみられる。もちろん毎回そうなるわけではなく、ファイルの構造によっては差分更新のほうが早く済む。
原因探しでは、ゲームエンジンの名前も出た。
Unreal Engineの更新のやり方のせいだよ。
Helldiversは Unreal Engine じゃないよ。
『HELLDIVERS 2』はUnreal Engineではなく、Autodesk Stingrayをもとにした独自のエンジンで作られている。Steamのドキュメントが挙げる問題も特定のエンジンに限った話ではなく、パックファイルをどう組むかで誰にでも起こりうるものだね。
ファイルが少しでも変わったら、丸ごとダウンロードし直さなきゃいけない。中身の追加や不具合修正は、ゲームのファイルの大半、場合によっては全部に触れることが多い。
ファイル単位で考えるとこう見えるけれど、Steamが比べているのはファイル全体ではなく1MBのチャンク。変わらないチャンクは再利用されるので、「1か所でも変われば全部」というほど単純ではない。本当に全部を落とし直すことになるのは、先に書いた位置のずれや圧縮の仕方で、変更がファイル全体へ散ってしまう場合だ。
当の『HELLDIVERS 2』のプレイヤーからは、別の実感も寄せられた。
自分の最近のHD2の更新は、大きくても2.5GBくらいで、だいたい1GB前後だったよ。
同じ作品でも、回によって更新の大きさはかなり違う。新しい武器や敵、マップを足す回と、修正だけの回とでは、そもそも配る中身の量が違うからね。
最後は「文句を言うくらいなら自動更新にしておけば」という突き放した返しに、こんな反論がついていた。
それで、遊んでいる最中にSteam以外のゲームのフレームレートがいきなり30まで落ちるの? 遠慮しておくよ。
更新の重さは、ダウンロードの量だけでなく、手元のストレージがその間ずっと忙しくなることにも表れる。Steamが変わったチャンクだけを配っていても、受け取った側では毎回、ゲームのファイルが一から組み立て直されているにゃ。
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