Microsoftがゲームを止めて広告を流す仕組みを特許出願、見れば一定時間は広告なし
広告を1本見るごとに、30分遊べる。
Microsoftの特許出願に書かれているのは、そんな仕組みだよ。ゲームの操作を一時的に止めて広告を流し、見終わったら「クレジット」が付いて、その分の時間は広告なしで遊べるようになる。広告を出すのはロード画面や一区切りついた場面にかぎり、戦闘の最中に割り込むことはしないという。
この出願は米国特許商標庁(USPTO)で9月3日に公開された。海外のPCゲーマーが集まるRedditのr/pcgamingでは、これを紹介したニュースがその日のトップに上がり、評判はかなり厳しいにゃ。
話題になるときは「特許を取得」と紹介されることが多いけれど、公開されたのは出願の中身で、審査を通って権利になったわけではない。
公開特許公報 US 2026/0260258 A1の表紙から、要点を拾うとこうなる。
- 名称: Contextually Aware Management of Interactive Software Application Access(状況を踏まえた、対話型ソフトウェアへのアクセス管理)
- 出願人: Microsoft Technology Licensing, LLC
- 出願日: 2026年4月23日
- 公開日: 2026年9月3日
- 経緯: 2023年5月1日に出した出願の継続出願。元の出願は放棄されている
つまりアイデア自体は3年以上前からあって、今年あらためて出し直されたものだね。書類の中では「対話型ソフトウェア」「ビデオゲーム」という書き方にとどまり、特定のゲームやXboxのサービスの名前は出てこない。Microsoftがこれを製品に載せると発表したこともない。特許は「使うかもしれない技術」を押さえておくために出すことも多く、出願=実装予定とは限らないよ。
公報の要約は短い。いちばんの骨組みはこの部分になる。
コンテンツ管理システムは、対話型ソフトウェアの内容に基づいて、プロモーションコンテンツのトリガーイベントを取得する。そのトリガーイベントに基づいてユーザーの操作を中断し、プロモーション用の映像・音声コンテンツを提示する。その後ユーザーの操作を再開させ、提示したコンテンツに基づいてクレジットを設定する。クレジットは、その有効期間中、ユーザーの操作が中断されるのを先送りする。
公開特許公報の要約より・日本語訳
「プロモーションコンテンツ」は、要するに広告のこと。本文には具体例がかなり細かく書かれていて、クレジットの長さについてはこう例示されている。
少なくとも一つの例では、クレジットは、ビデオゲームを30分間使用できる30分のクレジットである。(中略)ある例では、1クレジットで練習モードやチュートリアルモードなら1時間遊べるが、同じ1クレジットでもシングルプレイのキャンペーンモードでは30分、オンラインマルチプレイでは20分になる。別の例では、1クレジットで平日の午後なら1時間遊べるが、週末の夜は30分になる。
公開特許公報[0038]より・日本語訳
遊ぶモードや時間帯で1本の広告の「価値」が変わるわけだね。週末の夜のように遊ぶ人が多い時間ほど、広告を見る回数が増える設計が想定されている。
止められる瞬間をゲーム側が広告に教える

出願がわざわざ「状況を踏まえた」とうたっているのは、時間が来たら問答無用で止める方式の欠点を、書類自身が認めているからだよ。本文には、オンライン対戦のように止められないゲームで操作を奪えば、試合に負けたり、ロールプレイングゲームでキャラクターが死んだり、仲間と連絡が取れなくなったりする、と書かれている。
そこで広告を差し込むタイミングを、ゲームの側から教えてもらう。例として挙がっているのは次のような場面になる。
- ゲームの開発者があらかじめAPIで「ここなら止めてよい」と合図を出す(物語が中心のゲームなら、各チャプターの終わりなど)
- ロード画面、ラウンド終了画面、タイトル画面、セーブ画面
- 合図を持たない古いゲーム向けに、機械学習モデルが映像・音声・ゲームの状態から出来事を検出する
機械学習の部分では、倒した相手の表示や体力の回復といった画面上の変化を学習し、ゲームの流れの切れ目を見つける仕組みが説明されている。逆に、盛り上がっている場面や競り合っている場面を見分けて「今は止めない」判断に使う、という書き方もある。
もう一つ目を引くのが、プレイヤー自身が広告のタイミングを選べる形だね。クレジットの残りが少なくなると画面や音声で通知が出て、カウントダウンが表示される。その間にボタンを押せば好きなときに広告を見られるけれど、何もしないまま期限が来ると、そこで広告が流れる。本文では、これでプレイヤーが広告のタイミングと置き場所に納得しやすくなる、と説明しているにゃ。
r/pcgamingは「海賊版の理由が増えた」

もっとも、こうした「気を遣った広告」という説明は、r/pcgamingではほとんど響いていない。流れを決めたのは、最初のほうに付いたこの一言だった。
おお、ゲームを海賊版で遊ぶ理由がまた増えた! すばらしい!
もちろん皮肉だよ。お金を払って遊ぶ人ほど損をする仕組みになる、という不満がこの短い言葉に詰まっている。別のユーザーは、ゲームの外の話まで持ち出して、広告そのものへの疲れを吐き出していた。
広告が入るなら買わないだけ。どこもかしこも広告だらけで、広告なしにお金を払ってさえ出てくるのにうんざりしてる。人口1万5千人の町の真ん中に巨大なデジタル看板まで立てたやつがいて、どこへ行くにも広告を見せられる。
動画配信の「広告なしプラン」でも広告が出る例が増えているだけに、「最初は無料ゲームのためと言っても、いずれ有料のゲームにも来るのでは」という警戒がにじんでいる。出願書類自体は無料か有料かを限定していないので、その心配が出るのは無理もないにゃ。
一方で、スレッドの後半はアニメ『フューチュラマ』のネタ大会に流れていった。発端はこのコメント。
『フューチュラマ』で、広告が脳に直接送り込まれる話があったのを覚えてる? そう、あれ……
これに作中のセリフを引いて返す人が続き、20世紀の人間であるフライが広告について答える場面が丸ごと持ち出された。
「20世紀にも広告はあったんだろう?」「そりゃあったさ、でも夢の中にはなかった。テレビとラジオだけ……それに雑誌と映画にも。野球場にも、バスにも、牛乳パックにも、Tシャツにも、バナナにも、空にも書いてあった。でも夢の中にはなかったよ、絶対に」
広告が生活の隅々まで入り込んでいるのに「まだ夢の中だけは無事」と言い張るこのやり取りは、ゲームだけは広告から守られた場所であってほしい、という今回の反発とそのまま重なる。この引用には、こんな返しも付いていた。
自分が夢を見ないタチなのが残念だ。
冗談の形をとっていても、中身は「逃げ場がない」という諦めに近い。作中の商品名を並べて「それでも欲しいものはある」と茶化す返信もあり、広告そのものを笑い飛ばす空気と、本気でうんざりしている空気が入り混じっていた。
Microsoftがこの仕組みをどう使うつもりなのかは、公報のどこにも書かれていない。書かれているのは30分、20分、1時間というクレジットの長さと、2023年から出し直されてきた3年分の経緯だけだにゃ。
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