『原神』63キャラの声を無断AI学習、変声アプリ運営に75万元の賠償命令が確定
63キャラクターぶんの音色が、1点19元から59元で売られていた。
『原神』のキャラクターの声を無断でAIに学習させ、変声用の「音色資源パック」として販売していた上海のソフト運営企業に対し、上海市浦東新区人民法院が不正競争行為の即時停止と75万元の賠償を命じた。二審の途中で被告側が自ら上訴を取り下げたため、一審の判決はそのまま確定している。上海市では初となる、AIによる音声模倣をめぐる不正競争の事件とされる。被告企業の社名は公表されていない。
miHoYoがこのソフトの存在に気づいたのは2025年、日常的な巡回監視の中でのことだった。ソフトは『原神』の63キャラクターぶんの音声を抜き出して変声用の音色パックに仕立て、1点19〜59元の値段を付けて売っていた。ユーザーが何をしゃべっても、そのキャラの音色と声の調子に変換される作り。miHoYo側はこれを、聴いた人が出所を取り違える状態だと主張していた。買う前に声を確かめられる試聴機能まで用意されている。
売り方のほうも、声だけにとどまっていない。宣伝にはキャラクターの画像と名前がそのまま使われ、パックのアイコンには手を加えたキャラ絵が並んでいた。声と絵の両方で「そのキャラ本人」に見せる構成になっていたわけだね。
決め手になったのは声紋の司法鑑定だった。ソフト内の試聴音声とゲームの原音を突き合わせた結果、「同一と認定する方向」という結論が出ている。被告側も法廷で、許諾を取らないまま『原神』キャラの1分ぶんの音声を他の音素材と混ぜ、自前の変声モデルの学習に使ったと認めた。学習素材の出どころを当人が認めてしまった以上、争点は「使ったかどうか」から「それが誰の権利を侵しているのか」へ移る。
ゲーム会社にも音色の権利を認めた浦東法院
被告の反論は二段構えだった。変声の結果はAIの大規模モデルによる学習の産物であって、出力は使う人によって変わる。そもそも声の権利は声優個人に属するもので、ゲーム会社が持っているものではない——という筋書き。後半はけっこう厄介な言い分で、これが通れば、声を盗まれた側の企業は自分の名前で訴えを起こせないことになる。
浦東法院はここを切り分けた。ゲームキャラクターの音色の特徴は、そのキャラに設定された属性や技能から決まってくるもので、聴いた人はその声から特定のゲームを思い浮かべる。つまり商品の出所を示す「商業標識」として機能している、という認定だった。
この整理が効いてくるのは、守られる対象が声優の人格的な利益だけではなくなる点にゃ。特定のキャラクターの声が長い時間をかけて積み上げてきた商業的な識別の利益が、声優個人の権利とは独立したものとして保護される。著作権ではなく反不正当競争法(日本の不正競争防止法にあたる法律)の枠で裁かれたのは、この道筋を通ったからだ。賠償の75万元には、経済的損失と合理的な支出の両方が含まれている。
キャラクターの声を資産として抱えている運営型タイトルにとっては、使える手札が1枚増えたことになる。声優個人が動かなくても、ゲーム会社の側から止めに行ける。
最高人民法院が24条のAI審理意見を公表
判決とほぼ同じ時期に、中国の最高人民法院が「人工知能をめぐる紛争案件の審理に関する意見」(法発〔2026〕10号)を9月7日に公表した。5部分24条、AIに関する裁判の基準を最高審判機関がまとめた初めての文書になる。対象はかなり広く、AIによる顔と声の差し替え、AIの誤った生成による権利侵害、個人情報の暴露、利用者ごとに価格を変える行為、自動運転、モデルの学習まで踏み込んでいる。基本原則として掲げられたのは、人間を中心に据えること、技術の発展を後押しすること、安全の線を守ること、の3つ。
声については第4条にこう書かれている。自然人の同意を得ずにその声を学習素材として使い、音色・抑揚・発音のクセを真似て、その人だと分かる合成音声を生成した場合、声の権益の侵害が成立する——最高人民法院の発表。これまで解釈で埋めるしかなかった部分に、条文の形で線が引かれた。

こちらが扱っているのは自然人の声の権益で、浦東法院の判決が認めたゲーム会社の商業的利益とは切り口が違う。ただ、一方は裁判のルールを定めた文書、もう一方は金額の付いた確定判決として、同じ月に並んで出てきた。無断で学習させた声の扱いは、しばらく法の外側に置かれていた領域だったところだね。
上訴が取り下げられた時点で、75万元はもう動かせない数字になっている。
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