渋谷の地下通路が丸ごと『8番出口』に、300万本突破の記念広告が道玄坂で掲出中
9月7日の夕方、いつもより早く仕事を上がれた人が、渋谷の地下通路で足を止めた。投稿された写真に添えられていたのは「家に帰れるか不安になってきたな」の一文。写っているのは、ごく普通の駅の通路——のはずだった。等間隔に並ぶポスター、同じ模様の壁、奥へ吸い込まれていく蛍光灯。『8番出口』を触ったことがある人なら、これが何の眺めなのか一目で分かる。
合成でも悪ふざけでもなく、本物の交通広告にゃ。PLAYISMが『8番出口』の全世界累計販売本数300万本突破を記念して、9月7日(月)から一週間掲出しているもの。つまり今も出ている。
B0ポスター30枚×2面、渋谷の地下通路がまるごと『8番出口』
場所は「道玄坂ハッピーボード」。東急・田園都市線渋谷駅の地下1階、道玄坂方面へ抜ける通路にあるポスター枠で、B0サイズが15連×2段の計30枚、それがA面・B面の2つぶん壁に貼り付く。都内の駅広告のなかでも指折りに大きい部類で、通路そのものを一色に染められるのが売りの媒体。
この形が、ちょっと出来すぎている。『8番出口』は等間隔にポスターが並んだ地下通路を、異変を探しながら何度も往復するゲームだ。長い直線の壁にポスターが規則正しく連なるという媒体の性質が、ゲームの舞台の構造とそのまま重なる。作品に合わせて場所を選んだのか、場所を見てから作品の見せ方を決めたのか——どちらにせよ、通路の形をここまで活かした広告はそう多くない。
作り込みも細かい。タイトルロゴと「300万本」を大書きして押し切る構成ではなく、壁の目地からポスター1枚1枚の中身まで、ゲームの通路にありそうなものが並ぶ。アルバイト募集の求人ポスターのように、現実の駅に貼ってあっても誰も気に留めないたぐいの紙まで再現されている。
公式の告知には、こんな一文が添えてある。「駅及び、駅係員へのお問合せはご遠慮下さい」。広告の出来を語る文章よりも、この注意書きのほうがよほど雄弁かもしれない。本物の案内表示と見分けが付かないところまで持っていったから、先回りして書いてある。



時給1000円のバイト募集が「異変」と指摘された
最初の1枚が広まったあとの反応が、この広告のいちばん面白いところだと思う。みんな勝手に異変を探し始めた。
「何回か引き返す羽目になりそう」「異変を見逃したら帰れなくなるやつだ」あたりは想定内として、指摘が集まったのは例のアルバイト募集ポスターだった。曰く、時給1000円は今の東京では最低賃金を割っている。「時給1000円は異変だろ」「今や違法なのおもろい」——ゲームの中に置かれた小道具ではなく、2026年の現実の側が異変を生んでしまった格好。撮影した本人も「時給が最賃を割っている…!これは重大な異変なので引き返しましょう」と返していた。
もうひとつ多かったのが、投稿の前置きへの総ツッコミ。「いつぶりかの18時台退勤で感動してうきうき」という書き出しに対して、「18時台退勤が異変の可能性はありませんか…?」「いつもより早く帰れた時点で引き返すべきだった説」。広告そのものより、それを見ている人の日常のほうが異変だったという流れ。
「親の顔より見た広告」という一言も転がっていて、これがいちばん的を射ている気がする。3年弱のあいだにあの通路を何百回とループさせられた人間が、それだけの数いるということだから。
数字の伸び方を並べると、この作品の妙な息の長さが見えてくる。
| 時期 | 累計販売本数 |
|---|---|
| 2023年11月29日 | Steam版発売 |
| 2024年8月 | 100万本 |
| 2025年8月 | 200万本 |
| 2026年9月7日 | 300万本 |
100万本ごとに、ほぼ1年ずつ。2025年8月の到達は実写映画の公開直前で、そこから先は映画を観た人の流入もあっただろうけれど、それを差し引いても直近1年でもう100万本積んでいる。発売から3年近く経った短編ゲームの数字としては、かなり異様な部類だと思う。
開発したのはKOTAKE CREATE。個人の開発者が作った短編ウォーキングシミュレーターが、公式の紹介文にある通り映画化・コミカライズ・ノベライズまで通り抜けて、いまは渋谷の駅の壁を30枚単位で占拠している。異変を探して引き返すというだけのルールが、ここまで遠くへ届いた。
300万本を記念したセールも進行中。PS Storeを除く各プラットフォームが対象で、Steamでは『8番出口』『8番のりば』ともに30%オフの329円になっている。
『8番のりば』は2024年5月31日に出た続編で、舞台は地下通路ではなく走り続ける電車の中。異変を探すという骨格は共通しているものの、車両を移動しながら状況が転がっていく作りで、前作とは手触りがそこそこ違う。
渋谷の通路のほうは、9月7日から一週間の掲出。残りはもう数えるほどしかない。
関連記事
落ちる猫と落ちるトースト、合体させたら宙に浮いた ― 物理ジョークを遊びにした『CATO: Buttered Cat』
猫は足から着地する、バタートーストはバター面から落ちる。じゃあ背中にトーストを縛ったら…? そんな屁理屈から生まれたパズルアクションが、じわじわ効いてくるにゃ。
『ドラクエ』×Gemini、渋谷・原宿で“じゅもん”を唱える無料イベント『ジェミニクエスト』7月30日開幕
スライムやキラーマシンの立像が街に出現。Geminiに好きなじゅもんを唱えさせて、自分が勇者になった一枚を生成できるリアルRPGが渋谷・原宿の5会場で始まるにゃ。参加は無料。
既製カードが一枚もないDCG『Card Make Arena』発表、効果もイラストも自作して対人戦
PLAYISMとLizardryの新作は、収録カードがゼロ。名前も能力もイラストも自分で設計したカードを持ち寄って戦うPvPカードゲームで、2026年内にSteam早期アクセス開始予定にゃ。

コメント (0)
最初のひとことをどうぞ🐈
感想でも「わかる」の一言でも大歓迎。あなたのコメントがこのページの一番乗りです。