史上最も影響力のあるゲームはどれか 図書館・殿堂・美術館が出した3つの答え
「ゲーム史でいちばん重要な1本はどれか」。この話題は定期的に盛り上がるのに、決着だけは一向につかないにゃ。挙がる名前は毎回だいたい同じ——スペースウォー!、パックマン、スーパーマリオ、DOOM、テトリス。それでも結論が一つにならない。
ただ、この問いに“公式に”答えを出した組織がいくつかある。米議会図書館に持ち込まれた10本のリスト、ニューヨーク州の博物館が毎年選ぶ殿堂、そしてMoMAが収蔵した14本。この3つを並べると、選ぶ側が「影響力」という言葉で何を測っているのかが、けっこうはっきり見えてくる。
2007年、図書館に持ち込まれた10本
スタンフォード大学の学芸員ヘンリー・ローウッド氏が2006年9月に米議会図書館へ提案し、2007年のGDCで発表したのが「Game Canon」。米国の国立フィルム登録簿にならって、後世に残すべきゲームを選ぼうという試みで、講演の記録はInternet Archiveに残っている。選考にはローウッド氏のほか、マテオ・ビッタンティ氏、ゲームデザイナーのウォーレン・スペクター氏、スティーブ・メレツキー氏らが加わった。
| タイトル | 年 | 起点になったもの |
|---|---|---|
| Spacewar! | 1962 | 最初期のデジタルゲーム |
| Star Raiders | 1979 | 一人称視点の宇宙戦闘 |
| Zork | 1980 | テキストアドベンチャー |
| Tetris | 1985 | 落ち物パズル |
| SimCity | 1989 | 箱庭シミュレーション |
| Super Mario Bros. 3 | 1990 | 横スクロールアクション |
| Civilization I・II | 1991 | ターン制ストラテジー |
| Doom | 1993 | FPS |
| Warcraftシリーズ | 1994〜 | RTS |
| Sensible World of Soccer | 1994 | スポーツゲーム |
年は英語圏基準なので、日本の感覚とはズレる(『スーパーマリオブラザーズ3』のファミコン版は1988年発売)。
このリストの物差しは分かりやすい。「今も生きているジャンルの、出発点になったか」の一点だ。だから最も売れた作品でも、最も出来がいい作品でもない。ゲームカタログではなく、系譜図なんだにゃ。
殿堂が見るのは「その後もずっと遊ばれたか」

ニューヨーク州ロチェスターのThe Strong National Museum of Playが2015年に始めたのが、World Video Game Hall of Fame。アーケード・コンシューマ・PC・携帯機・モバイルを分け隔てなく対象にして、長期にわたって遊ばれ続けたかと、業界や社会・大衆文化に影響を与えたかの2点で選ぶ。最終選考はジャーナリスト、研究者、ゲーム史の専門家が担当する。
初年度に選ばれたのはPong、パックマン、テトリス、スーパーマリオブラザーズ、DOOM、World of Warcraftの6本。以降は毎年4本前後が加わり、累計は50本を超えた。
そして2026年5月7日に発表された最新の4本に、『ドラゴンクエスト』(1986年)が入っている。同時に選ばれたのはAngry Birds(2009年)、EA Sports FIFA International Soccer(1993年)、SILENT HILL(1999年)。惜しくも漏れたファイナリストにはFrogger、Galaga、League of Legends、ロックマン、パラッパラッパー、RuneScape、Skyrim、ときめきメモリアルが並んでいた(The Strong 発表資料)。
ドラクエについて同館の学芸員は、人気の度合いに地域差はあるものの、RPGというジャンルの作られ方そのものに与えた影響は否定しようがない、という趣旨の評価をしている。40年前のファミコンソフトが、2026年に海の向こうの博物館で殿堂入りする——これはこれで、影響力の証明のされ方としてかなり贅沢だにゃ。
三つ全部に載っているのは、テトリスだけ
3つめがMoMA(ニューヨーク近代美術館)。2012年11月、建築・デザイン部門のコレクションとして14本のゲームを収蔵すると発表した。パックマン、テトリス、Another World、Myst、シムシティ2000、vib-ribbon、The Sims、塊魂、EVE Online、Dwarf Fortress、Portal、flOw、Passage、Canabalt。2013年3月から「Applied Design」展で公開されている(MoMA公式)。
ここの物差しはまた別で、売上でも歴史的な先着順でもなく、デザインとして見るに値するか。だからDwarf FortressやPassageのような、商業的なヒットとは縁遠い作品が堂々と並ぶ。
で、3つを重ねるとこうなる。
| 作品 | Game Canon | 殿堂 | MoMA |
|---|---|---|---|
| テトリス | ○ | ○(2015) | ○ |
| DOOM | ○ | ○(2015) | — |
| パックマン | — | ○(2015) | ○ |
| シムシティ | ○(初代) | — | ○(2000) |
| スーパーマリオ | ○(3) | ○(初代) | — |
3つすべてに、しかも同じタイトルで載っているのはテトリスだけ。シムシティとマリオは、シリーズでは一致しているのに選ばれた“1本”が食い違う。起点として重要な作品と、遊ばれ続けた作品と、デザインとして評価される作品は、同じシリーズの中ですら別物なんだにゃ。
ちなみにテトリスは、いまだにSteamで新しい形の作品が出続けている。1984年生まれのルールがまだ現役という事実そのものが、3つの物差しを全部通過した理由でもある。
物差しが3本あるという話

結局のところ、「一番影響力があるゲーム」の答えが割れるのは、測っている物差しが違うからだ。ジャンルを産んだかで測ればSpacewar!やDOOMが前に出るし、どれだけ長く遊ばれたかで測ればテトリスやパックマンが強い。デザインの完成度で測れば、売れていない小さな作品が並ぶ。
どれか一つが正しいわけでもない。専門家を集めて何年もかけた3つの選定作業ですら、揃った答えは1本だけだった。その1本がロシア生まれの落ち物パズルだったというのは、なかなか面白いオチだと思うにゃ。
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