PixMofu

『Vapor World』AI生成カットシーンを全削除、早期アクセス初日に監督が撤回パッチ

投稿: 2026/08/20by tobariware6分で読めます
画像

早期アクセスが始まった日の夜には、問題のカットシーンはもうゲームから消えていた。

韓国の5人チーム ALIVE Inc. が開発するソウルライク・プラットフォーマー『Vapor World: Over The Mind』が、AIで生成したストーリーカットシーンへの批判を受けて、それらを全削除するパッチを配信した。監督が「今週末までに置き換える」と表明してから、5時間半ほどしか経っていない。

手描きの絵をAIで動かしたとストアページに開示

Steam早期アクセスの配信開始はストア表記で2026年8月18日(現地時間)、日本時間では8月19日。同じ日に Xbox Game Pass Ultimate と PC Game Pass へも「Game Preview」として初日追加されている(Xbox Wire)。記憶を失った少年が他人の悪夢に閉じ込められ、弾き(パリィ)を軸にした戦闘で現実へ戻る道を探す、という筋書きの作品だよ。早期アクセス版はプロローグと2エピソードで約5時間、1.0では約12時間を見込むとしている。

火種になったのは、ストアページの「AI生成コンテンツの開示」欄だった。そこにはおおむねこう書かれている——手作業で描いた静止画をAIツールで短い映像に動かし、ストーリーのカットシーンに使っている。その音声は一部がAI音声ツールによる生成で、残りはチームが演じた録音をAIで処理したもの。原画はすべて自分たちの手によるもので、AIは完成した絵に動きを与えるためだけに使っている。プレイ中にリアルタイムで生成される要素はなく、すべて開発中に制作・確認された固定の事前レンダリングとして出荷される——。

開示としてはかなり細かいほうだけど、実際に流れる映像を見た人の反応は厳しかった。Steamのコミュニティには「AIの警告表示をしてくれたSteamに感謝する」「返金した」といったスレッドが並び、レビュー欄では合成音声の違和感と、静止画を無理に動かした映像の不自然さが繰り返し指摘された。開示文にある「short video sequences(短い映像)」が実際には数分級のカットシーンだった、という食い違いを突く声もあった。

監督は「現実より理想に近かった」と撤回を説明

配信当日の夕方、日本時間8月19日17時ごろに、監督の Young Kim 氏が「About AI in Vapor World」と題した投稿をSteamに出した。

AIを使うことについてどう思うかと聞かれたら、正直なところ長く考え込むことになる。私がAIを選んだのは、それが手持ちのリソースでは届かない表現に到達できると信じたからであり、物語やシネマティック以外の、ゲームそのものにもっと集中できるようにするためだった。それは私の性急な判断だった。AIがもう一段飛躍して、誰にも見分けがつかない地点に届かないかぎり、私が信じていたものは現実というより理想に近かった。

そのうえで挙げたのが「二つの約束」。ひとつは、今後いっさいAI生成のカットシーンを使わないこと。もうひとつは、すでに入っているAIカットシーンをすべて取り除き、自分たちで作った内容に完全に置き換えること。「一部のプレイヤーがAIの使用に失望するだろうとは予想していたが、ここまで大きくなるとは思っていなかった」とも書いている。

興味深いのは、その撤回がなぜ即日で成立したのかという説明のほうだ。同氏によれば、このゲームのカットシーンはもともと全編、自分たちの手によるインゲームカットシーンとして作られていた。AI版への差し替えを始めたのはごく最近で、プレイヤーが目にしたのはその移行の途中の状態だったという。「だから、手が入っていないように見えるとしたら、それは画面に出ているものに対する正当な読み方だ」とまで踏み込んでいる。自前のカットシーンで複雑な物語を伝えようとして何度も納得のいく結果にならず、そこでAIに頼った——けれど体験を損ねたのなら、悪いのは道具ではなく自分たちの力不足だ、という書き方だった。

週末予定の削除パッチが同じ日の夜に配信

そして同じ8月19日の22時半ごろ、「Patch 0.5.4: AI Removal Hotfix」が配信される。声明から5時間半足らず、早期アクセス開始を告げる投稿から数えても9時間ほどしか経っていない。

変更点は短い。ゲームからAI生成カットシーンをすべて削除し、差し替え前に自分たちで作っていたインゲーム版を復元。そして「今後、AI生成のカットシーンは使わない。どのカットシーンにも、約束したとおり」。既知の不具合として、今後数回のパッチでセーブデータがリセットされる可能性があることも同時に告知されている。ここは早期アクセス作品らしい荒さが残るところ。

数字のほうも見ておくと、配信週にウィッシュリストが10万件を超えたと launch 時の投稿にはある。期待値は決して低くなかった。一方でSteamのユーザーレビューは、この記事を書いている時点で40件中9件が好評(23%)の「ほとんど不評」。母数がまだ小さいので、カットシーン差し替え後にこの数字がどう動くかは、これから積まれるレビュー次第になる。

価格は日本で1,700円、9月1日までの発売記念10%オフで1,530円。正式版の1.0到達時に値上げすると開発チームは明言している。対応言語は英語・韓国語・簡体字中国語・繁体字中国語の4つで、この4言語についてはインターフェース・音声・字幕がすべて用意される一方、日本語は表示も字幕も入っていない。対応OSはWindowsのみ。日本語で遊びたい人にとっては、AI騒動より先にそちらの壁があるにゃ。

ゲーム本編から映像が消えたあとも、ストアページのAI生成コンテンツ開示欄は、執筆時点でまだ当初の文面のまま置かれている。

関連記事

コメント (0)

投稿は匿名で受け付けます (通報対応あり)。

  • 最初のひとことをどうぞ🐈

    感想でも「わかる」の一言でも大歓迎。あなたのコメントがこのページの一番乗りです。