PixMofu

ゲームのBGMにAIは「あり」か——開示データが映す、賛否の本当の争点

投稿: 2026/07/27by 編集部7分で読めます

「ゲームのBGMをAIに作らせるのはアリかナシか」——この話題、定期的に燃え上がるにゃ。ただ議論を眺めていると、賛成派も反対派も“感触”で殴り合っていることが多い。せっかくなので、実際に確認できる数字と制度のほうから、争点がどこにあるのかを整理してみるにゃ。

開示された1万本、その中身は絵と声に偏っている

まず前提。Steamでは2024年1月10日から、生成AIで作ったコンテンツをストアページで開示する仕組みが動いている。Valveは開示を「開発中に作った事前生成コンテンツ」と「ゲーム実行中に生成されるコンテンツ」の2種類に分け、後者には違法なものが出ないための対策の説明まで求めた(Steam公式アナウンス)。2026年1月にはルールが大きく書き直され、コード補助のような“開発を速くするだけのツール”は開示不要、プレイヤーが実際に触れる生成物に焦点を絞る形になっている。

で、その開示を集計するとどうなるか。分析会社Totally Human Mediaの集計では、AI利用を開示したSteamタイトルは10,258本・全ライブラリの約8%。そのうち売上100万ドル超のタイトルに絞って「何にAIを使ったか」を見ると、内訳はこうなる。

用途割合
ゲーム内アート49%
ボイス・セリフ27%
プリプロ・コンセプト13%
マーケティング・宣伝11%
翻訳・ローカライズ9%

音楽が上位に顔を出さない。約53,600本のSteamリリースを対象にした別の個人分析でも結論は同じ方向で、開示されたAIは圧倒的に視覚アセットに寄っている(レビュー数の少ない層で72%、成功タイトルで57%が視覚アセットに言及)。音声合成は成功タイトルで24%、不振タイトルで8%。つまり現時点で燃えている“AIアセット”の実体は、まず絵、次に声にゃ。音楽はまだ主戦場ではない。

著作権が付かない、という実務の壁

じゃあ音楽だけ無風なのかというと、そうでもない。むしろ大手が手を出しにくい理由がはっきりしている。

米国著作権局は2025年1月29日に公開した報告書パート2で、人間の著作性を著作権の土台として再確認した。AIが全面的に生成した出力は保護されない。プロンプトをどれだけ丹念に書き込んでも、それ自体では著作物にならない。人間とAIの寄与が混ざった作品では、人間が表現要素を十分に支配していた部分だけが保護される、というのが基本線にゃ。

ゲームのメインテーマは、サントラ販売もあればコンサートもあり、二次利用も許諾もぶら下がる資産。そこに「権利が立たないかもしれない素材」を置くのは、感情論以前に契約上の事故になる。逆に言えば、権利が絡まない環境音や差し替え前提の仮BGMなら、ハードルはぐっと下がる。賛否の線は「AIか人間か」ではなく、「その曲が資産になるかどうか」で引かれている面が大きい。

声には契約があり、音楽にはまだない

もうひとつ、見落とされがちな非対称がある。

2025年7月、SAG-AFTRAの組合員は2025年インタラクティブメディア契約を95.04%の賛成で承認し、長期のストライキが終わった。デジタルレプリカの利用には同意と開示が必要で、ストライキ中は新規生成への同意を停止できる。契約は2028年まで続く。

ただしこれは“演者”の枠組みにゃ。作曲家やスタジオミュージシャンは、この契約が守る範囲の外にいる。声にはAI条項付きの労働協約があり、音楽には同等のものがまだない——ボイスAIより音楽AIのほうが数字上は目立たないのに、作曲側の警戒が強いのは、この守りの薄さが理由として大きいはず。

88%が「人間の曲がいい」と答え、聴くと差が消える

聴き手の側はどうか。ここが一番おもしろい。

米デイトン大学のAndrew Edelblum氏らが『Psychology & Marketing』誌に発表した研究では、88%が抽象的な質問に対しては「人間が作った音楽のほうがいい」と答えた。ところが実際に聴かせると、AI生成曲と人間の曲の評価はほぼ同じになる。それでいて、AIと知らされた曲を人に薦める意欲は15〜25%низ低くなる。研究チームの言い方を借りれば「好きなのに、好きだと思われたくない」。同じ検証を詩でやると、この偏りは出なかったという。

音楽の受け取り方が“ラベル”に強く引っぱられることは、別の研究でも裏づけられている。2025年12月に公開されたStammer氏・Strauss氏・Knees氏の論文では、AI生成曲への好みと感情の強さを最もよく予測したのは曲そのものの特徴ではなく、聴き手のAIに対する態度だった。倫理・文化・文脈といった判断軸が、音の評価にそのまま混ざり込んでくる。

つまりAI音楽の問題は「バレるほど質が低いか」ではなく、「AIだと分かった瞬間に何かが起きるか」にゃ。そして開示制度がある以上、分かる。

プレイヤーは、まず絵で見抜いてくる

その「分かる」がどう機能するかは、直近の実例が示してくれた。

『アサシン クリード』の生みの親Patrice Desilets氏率いるPanache Digital Gamesは、2026年6月5日にSteamで無料公開した『1666: Amsterdam』のプロローグについて、同月、生成AIで作られた初期バージョンのアセットが混入していたことを認めた。対象はゲーム内のポートレートと外部の宣伝素材。人間の手による差し替えをアップデートで行うとし、アーリーアクセス版と製品版にはAI生成アセットを一切含めないと明言している。きっかけは、プレイヤーが絵の“におい”に気づいて指摘したことだった。

念のため書いておくと、この件は音楽ではなく絵の話にゃ。ただ「プレイヤーが自力で検知して、開発側が撤回に追い込まれる」という一連の流れは、素材の種類を選ばない。耳のほうが検知は難しいけれど、開示欄には書いてある。

賛否をひとことでまとめるなら、争点は「AIが良い曲を作れるか」ではなく、その曲に権利が立つか、作った人が守られているか、そして開示されたときプレイヤーが何を感じるか——この3つのどれかに毎回帰着している。音楽AIが技術的に成熟しても、この3つは自動では解けないにゃ。

関連記事

コメント (0)

投稿は匿名で受け付けます (通報対応あり)。

  • 最初のひとことをどうぞ🐈

    感想でも「わかる」の一言でも大歓迎。あなたのコメントがこのページの一番乗りです。