Rockstar、組合のDiscordに2年半の「内通者」 GTA6開発者34人の解雇めぐる審理で主張
「2年半以上」という数字が、グラスゴーの労働審判で出てきた。Rockstar Gamesの従業員が自分たちで立ち上げたDiscordサーバーに、そこでのやり取りを会社側へ渡していた人物が入り続けていた期間——原告側は冒頭陳述でそう主張している。
34人解雇から11か月、グラスゴーで本審理へ
まず何が起きているのかを整理しておく。2025年10月、Rockstar Gamesは英国とカナダで計34人の従業員を解雇した。会社の説明はずっと変わっていない。公開のフォーラムで会社の機密情報を共有した重大な非違行為による解雇であって、労働組合への加入や組合活動を理由にしたものではない、というものだ。
解雇された側の見方はまったく違う。31人はIWGB(英国独立労働者組合)の組合員で、同組合はこの一件を「ゲーム業界の歴史でもっとも露骨で容赦のない組合つぶし」と呼んできた。主張の柱は2本。組合活動を理由に狙い撃ちされたこと、そして組合員の名簿を作って不利益な扱いに使ったこと——英国法でいうブラックリスト化にあたる、という組み立てにゃ。IWGBの告知では、懲戒の手続きも異議申し立ての機会も与えられなかった点も争点に挙げられている。
本審理は9月10日にグラスゴーの審判所で開廷し、10月16日まで続く予定。初日の朝には審判所の前で集会が開かれ、IWGB会長のアレックス・マーシャル氏は「Rockstarは“グランド・セフト・雇用の権利”をやってのけようとしたと考えている」と述べている。組合側が求めているのは職場復帰または補償、それに解雇が不当だったという正式な認定だ。日程の終わりは、『グランド・セフト・オートVI』の11月19日という発売日のおよそ1か月前にあたる。



人事が2年半受け取っていた組合Discordの中身
冒頭陳述で原告側が示したのは、会社が提出した開示資料をもとにした時系列だった。少なくとも2024年2月から、人事部門の責任者が若手社員を通じてサーバー内の組合活動の情報を受け取っていた、というのがその中身。以後21か月のあいだにこの2人のやり取りは少なくとも26回を数え、そのうち半分ほどは人事側から持ちかけたものだったとされる。渡っていたのは画面のスクリーンショット、音声の記録、組合員の人数、そして誰が中心になって動いているかの名前。サーバーに出入りできた期間そのものは、2年半を超えていたという。
原告側がいちばん重く見ているのは解雇のタイミングだ。英国には、組合員が一定の割合に達すると会社へ法的な承認を求められる仕組みがあり、その入口が従業員の10%。2025年10月18日、組合員数がその10%を超えたことがサーバー内で共有された。そこから2週間足らずの10月30日に、解雇が実行されている。ここが偶然で片づく話ではない、というのが原告側の組み立てにゃ。
反論はまったく別の角度から来る。会社側の代理人は、『GTA VI』のゲームデザインを守ることは「AppleがiPhoneを守るのと同じ」「コカ・コーラがレシピを守るのと同じ」だと述べ、徹底した秘密主義は正当な経営判断だと主張した。問題のDiscordについても、組合の運営メンバーだけの部屋、組合員だけのチャンネル、そして350人規模の開かれたチャンネルという3層構造になっていて、最後の層には競合他社の人間も元従業員もジャーナリストも混ざっていた、と指摘している。加えて、組合に入っていないカナダの従業員3人も同じ理由で解雇したことを、組合活動が動機ではない裏づけとして挙げた。
どちらの言い分が通るかを決めるのは審判所で、いまの段階では何も確定していない。ここに並べたのは、あくまで双方が法廷で述べた主張だ。
翌9月11日の審理では、解雇された元従業員の1人が証言台に立った。話の中心になったのは、2023年春に会社へ提出された在宅勤務についての署名だった。
署名に名を連ねたのはおよそ150人で、そのうち組合員は15〜20人ほど。この元従業員は、署名を手渡した顔ぶれから誰が組合員かは推測できたはずだと述べ、署名は「好ましくないとみなされる活動」をしている人間の「監視リスト」の土台として使われた、と証言した。約300人のRockstar従業員が会社について話せる場としてDiscordサーバーを立ち上げた側の1人でもある。
会社側の代理人はここに正面から切り込んでいる。署名のなかに組合員だと分かる情報は何ひとつ含まれていないと反論したうえで、名簿が会社に渡ってから解雇まで2年8か月も開きがあることをどう説明するのかと問い質した。元従業員の答えは、それが解雇の唯一の理由だとは言っていない、他の組合活動とつながっている、というものだった。

この話はReddit の r/Games にも持ち込まれ、スレッドは短時間で伸びた。最初に並んだのは、驚きよりも諦めに近い反応だったにゃ。
待遇の改善を求めた従業員を狙い撃ち? いかにもRockstarらしい話だ。
それでも史上最高の売上記録を塗り替えるんだろうな。誰も気にしていないんだから。(自分が気にしていないという意味ではなく)
この「誰も気にしない」に、すぐ別の角度からの指摘が入った。
統計的には「気にしない」というより「知らない」のほうが近いと思う。これだけ一般層まで届いている作品だと、こういう見出しを追いかけているのは対象市場のごく一部でしかない。
話がいちばん長く続いたのは、Rockstarが掲げる「情報漏えい対策」という理屈そのものをめぐる応酬だった。会社側は在宅勤務の制限を秘密保持の必要から説明しているが、そこに納得しない声が続いた。
機密性のきわめて高い情報を扱う仕事でもリモートワークは成立する。閉じたネットワークでやればいい。実際に漏れている以上、会社の言い分は理由として弱いし、漏えいも防げていない。社員が幸せなら良い結果が出るし、ぞんざいに扱われた社員はそうならない。
この書き込みには、内容ではなく書き方を突く返信も付いた。
公開のSNSで見ず知らずの相手に向かってそれを誇ってみせるのは、自分で思っているほど有効な一手じゃない。むしろRockstar側の主張を補強していると思う。
ただ、元の指摘そのものは的を射ているという声のほうが多く集まっていた。
言っていること自体は正しい。開発者やパブリッシャーに何度も伝えようとしてきた話でもある。漏えいの最大のリスク要因が何か分かる? 人をぞんざいに扱うことだよ。待遇がよくて、気分よく働けて、身分が安定している社員は、まず漏らさない。
いちばん効くのは安定だと思う。まともなキャリアの見通しがあれば、人はそれを守ろうとするし、つまらないことで棒に振ろうとはしない。それがここまで珍しくなってしまったから、誰も律儀に守る気にならない。
誇っているんじゃない。悪い職場環境をつくるための、ばかげた言い訳を終わらせたいだけだ。
会社側の理屈をあえて代弁してみせる書き込みもあった。ここは審理でRockstarが主張している内容ともおおむね重なる。
Rockstarの立場からすれば、できることは全部やっているという話なんだと思う。在宅勤務を極端に絞る、私物の端末を社内ネットワークにつながせない、USBメモリのような記録媒体を禁止する。その論理からすると、監視されていない数百人規模のサーバーは放置できない、となる。
そこへ、「そもそも漏えいの中身は何だったのか」という問いが投げ込まれ、スレッドで最も細かいやり取りが始まった。
ある検証動画によると、解雇の理由になった“漏えい”というのは、6人を超える人数で遊べるマルチプレイ要素のあるゲームを作っている、と外部に話したというだけの話だったらしい。世界が終わるような情報でもない。
その動画が扱っているのは「Discordで見た」という関係者の証言で、自分が言っているのもそこまでだ。何が漏れたかの全体像を示すものじゃないし、他に誰も漏らしていないという話にもならない。正確なソースはある?
このあと、リンクの取り違えを指摘され、投稿者が「そう、これが正しいほうだ」と訂正する流れまで含めて、スレッドはそのまま残っている。何が「機密情報」にあたるのかは審理の争点そのもので、外から見て確定している事柄ではない。掲示板で交わされているのも、その空白を各自の見立てで埋めようとする言葉だった。
審理そのものは10月16日まで。そのころには、『GTA VI』の発売まで1か月ほどしか残っていない。
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