サブノーティカ2をめぐる406億円の泥沼訴訟、ついに全面和解へ。全社員ボーナスとギルCEO退任が意味するもの
海の底より深いところで一年近く続いていた争いが、やっと終わったのニャ。
「サブノーティカ2」の開発元 Unknown Worlds Entertainment(以下UWE)の創業経営陣と、親会社 KRAFTON のあいだで泥沼化していた法廷闘争が、全面和解に至った。焦点だったのは、最大2億5000万ドル(およそ406億円)にのぼるアーンアウト=業績連動ボーナスの行方。結果として、争いの火種だったこの報酬はかたちを変えて社員に届き、いったんは会社に戻ったテッド・ギル(Ted Gill)CEOはあらためて円満退任することになった。
なんとも複雑な決着なので、まずは「何が決まったのか」だけ先に整理しておくニャ。
和解でまとまった主な内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 訴訟の扱い | 係争中の訴えはすべて取り下げ・和解 |
| ボーナス | UWEの全従業員が対象。3年にわたり分割で支給 |
| 支給範囲 | 買収当時の在籍者だけでなく、現在のスタッフ全員 |
| 今後 | ゲームの更新継続に応じて追加インセンティブも |
| テッド・ギル氏 | CEOを退任(裁判所命令でいったん復職していた) |
| 具体的な金額 | 双方とも非公開 |
ざっくり言えば、KRAFTON側が「約束されていたボーナスは払う」と折れたかたちで、しかも対象を全社員に広げた。当初の買収契約が定めていた条件より「大幅に多く報いる」との説明も出ている。
そもそも何を争っていたのか
話の起点は2021年、KRAFTONによるUWEの買収までさかのぼる。買収は前払い5億ドルに加えて、業績次第で最大2億5000万ドルを支払うアーンアウト付きという大型契約だった。この上乗せ分は、一定期間の売上(テスト期間は2025年末まで、売り手側の選択で2026年6月まで延長可能)に連動する仕組みになっていた。
ところが2025年7月、KRAFTONは創業者であるギル氏ら経営陣を解任し、新CEOにベテランのスティーブ・パポウ ツィス(Steve Papoutsis)氏を据える。これに対し、ギル氏とチャーリー・クレヴランド(Charlie Cleveland)氏、マックス・マクガイア(Max McGuire)氏の3人は「巨額のアーンアウト支払いを避けるため、意図的に開発を遅らせ自分たちを追い出した」と主張して提訴。ここから一年近い法廷バトルが始まったのニャ。
2026年3月には、米デラウェア州衡平法裁判所(Chancery Court)が「KRAFTONによるギル氏の解任は不当」と判断し、ギル氏の復職を命じる。ただし共同創業者2人の復職までは認められなかった。この時点で、争いは相当こじれていた。
皮肉なことに、ゲーム自体は特大ヒットだった
法廷でドロドロやっている裏で、肝心の「サブノーティカ2」は歴史的な滑り出しを見せる。2026年5月14日にSteamで早期アクセスが始まると、わずか5日で全世界400万本超を突破。売上はおよそ1億ドル規模とされ、今年屈指のスピード記録になった。
つまり、経営陣が「マイルストーンは達成できる」と言っていた通り、ゲームは大成功。アーンアウトの発動条件をきっちり満たしてしまったわけで、争いの構図としてはかなり皮肉が効いているのニャ。
早期アクセスの実機映像はこんな感じ。海の不気味さと美しさが同居した、シリーズらしい手触りがちゃんと戻ってきている。
▲ 公式の早期アクセス向けゲームプレイトレーラー(出典:Unknown Worlds Entertainment 公式YouTube)
この決着が持つ意味を、少し掘り下げてみる
ここからは事実整理を離れて、猫なりの見立てを少し。
まず、アーンアウトという仕組みの怖さが露わになった一件だと思う。 「業績が伸びたら追加で払う」という約束は、買い手からすれば成果が出るほど支払いが膨らむ構造でもある。今回のように、支払い義務が現実味を帯びた途端に経営陣の入れ替えが起きると、外からは「支払い回避では」と疑われても仕方がない。実際に裁判所が解任を不当と判断したことで、その疑念に一定の裏付けがついてしまった。買収時の“成功報酬”設計は、成功したときにこそ揉めるという教訓めいた事例になった。
次に、報酬の対象を全社員に広げた点。 当初のアーンアウトは基本的に創業者・株主に紐づく報酬だったが、和解では現在のスタッフ全員に、しかも3年分割+更新に応じた追加インセンティブという形で配られる。争いの発端が経営陣個人の報酬だったことを思うと、最終的に開発現場全体へ利益が回る着地になったのは、荒れた経緯のわりに前向きな結末と言える。少なくとも「作った人たちに報いる」という体裁は保たれた。
そしてギル氏の“二度目の退場”。 一度は不当に解任され、裁判所命令で復職し、そのうえで今度は自分の意思で去る——という流れは、ドラマとしてもかなり異例だ。復職を勝ち取ったのに残らないのは、和解の条件として折り込まれた面もあるだろうし、これだけこじれた関係のなかで舵取りを続ける難しさもあったとみられる。円満退任と発表されてはいるが、創業者が去った後のUWEが「サブノーティカ」の空気を保てるかは、これからの早期アクセス更新で問われることになる。
KRAFTON側は「開発と正式リリースに集中し、ファンに最高の体験を届けることを最優先にする」と説明している。ゲームが売れているだけに、ここでゴタゴタを長引かせるメリットは双方にない。泥沼を早めに畳んで開発に戻る、という判断そのものは理にかなっている。
とはいえ、買収したスタジオの創業者を解任 → 裁判で敗訴 → 大ヒット → 全面和解、という一連の流れは、KRAFTONにとって決して軽くない教訓を残したはず。今後ほかのスタジオを迎え入れるときの信頼にも関わってくる話で、和解で幕は引けても、評判という別の海はまだ底が見えないのニャ。
出典
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