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ゲーム開発の生成AI、契約段階で締め出す動きへ ― Steam新作の約3分の1がAI利用を開示

投稿: 2026/08/17by tobariware6分で読めます
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「マーケティングとゲーム内の素材に生成AIが使われているのではないか、という疑問や懸念をたくさんいただいた」――2026年6月9日、『1666: Amsterdam』を手がけるPanache Digital Gamesが、公式アカウントでそう切り出した。十数人のアーティストが在籍していると前置きしたうえで、指摘された素材を調べ直したという内容が続く。

Panacheは『Assassin's Creed』初代のクリエイティブディレクターだったPatrice Désiletsが率いるスタジオで、『1666: Amsterdam』は長らく塩漬けになっていた企画が形を変えて戻ってきたタイトルだ。プロローグがSteamで配信されるとすぐ、プレイヤーが画面内の肖像画と宣伝素材の質感に気づいた。

投稿によれば、古い版の素材がそのままプロローグに残っていたとのこと。「この見落としは自分たちの責任であり、不快な思いをさせたことをお詫びする」と書き、早期アクセス版と製品版にはAIが生成した素材を一切含めないと明言している。差し替えのアップデートも予告された。

謝って、直して、次はやらないと約束する。ここ1年で何度か見た流れだけど、注目すべきは指摘から返答までの速さのほうだと思う。素材が本物かどうかを見分ける目が、もうプレイヤー側にごく普通に備わっている。開発元の側も、それを前提に動くようになった。

Steam開示作品、AI利用は3本に1本

そもそも「AIを使ったかどうか」は、Steamでは申告制になっている。Steamworksのドキュメントは開示の対象を「ゲームに同梱されてプレイヤーが触れるコンテンツのうち、開発中にAIツールの助けを借りて作られたもの」と定義していて、出来上がったAI生成物は非AIのコンテンツとまったく同じ基準で審査される、とも書いてある。線引きは分かりやすい。プレイヤーの目や耳に届くかどうかであって、社内でどんなツールを使ったかではない。

もう一段きついのがゲーム実行中に生成する「ライブ生成」で、こちらは違法なものを出さないためにどんな歯止めをかけているかを、申告の時点でValveに説明しなければならない。

で、その開示欄が実際どのくらい埋まっているか。2023年7月から2026年7月までにSteamで出た53,597本を全数で数えた調査(2026年7月13日公開)によると、2026年半ばの新作のおよそ3本に1本がAI利用の開示付きだった。本数でいえば、もう珍しい存在ではない。

面白いのは売上のほうで、レビュー数から推計した売上シェアは10〜27%あたりを行き来している。本数のシェア(約33%)には届いていない。数は増えたけれど、1本あたりの売れ行きが押し上げられているわけではない、というのが調査の見立てだよ。

「作らない」宣言が発売前へ前倒し

反発が続いた結果として起きているのは、火が付いてから素材を差し替える対応ではなく、そもそも使わないと先に宣言してしまうやり方だ。

たとえばDaikon Gamesは自社サイトの倫理方針ページに、生成AIを「盗まれた作品の上に成り立つ、本質的に非倫理的な技術」と書いたうえで、「Daikon Gamesが制作・販売・配布するいかなる作品も、いかなる段階でも生成AIを使うことはないし、これからもない」と掲げている。コード・アート・音楽・文章・デザインのすべてが対象で、外注先にも同じ条件を求め、万一混入していたら取り除くとまで書いてある。かなり踏み込んだ書き方だね。ethics ページは誰でも読める。

同じ趣旨の宣言をストアページの説明文や自社サイトに置く小規模スタジオは、この1年でだいぶ増えた。売り文句というより、後から疑われないための予防線に近い。

一方で、資金を出す側・発売する側が契約書に「AI不使用」を書き込んでいるという話は、性質上ほとんど表に出てこない。契約書は非公開が原則で、当事者が破ったときにしか外からは見えないからだ。だから現時点で公の場に並んでいるのは、あくまで作り手側の自主的な宣言のほう。契約条項として一般化しつつあるのかどうかは、まだ公開情報だけでは断定できないところ。

もっとも、業界のどこかにはすでに文書化されたルールが存在している。俳優の労働組合SAG-AFTRAが2025年7月に批准したInteractive Media Agreementがそれで、デジタルレプリカ――要するに演者の声や姿を学習して作る複製――の扱いを正面から定めている。

項目定められた内容
同意デジタルレプリカの作成・使用ごとに、書面での個別かつ明確な同意が必要
事前の一括承諾雇用時にまとめて将来ぶんの権利を取ることは原則できない
報酬レプリカ利用に対する最低額を新たに設定。実行中に生成する用途はさらに高い水準
使用報告発売後、どのキャラクターにレプリカを使ったかを演者へ報告する義務
ストライキ時新たな素材の生成について、演者が同意を停止できる

契約書の側から「勝手に声を増やすことはできない」と縛る形になっている。つまり音声に関しては、プレイヤーが騒ぐより先に、交渉のテーブルで枠組みが決まっていたわけだ。

Steamの開示欄は、いま新作のおよそ3本に1本に付いている。その欄を空欄のままにしておくために、作りはじめる前の書類を書き換える――2026年のゲーム開発では、そこが最初の分岐点になりつつある。

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