SteamのAI開示欄は結局自己申告――Redditで実効性に疑問、2026年の新作は30.8%が開示
Steamのストアページを下へたどっていくと、システム要件の少し手前に「AI生成コンテンツの開示」という枠が現れることがある。チェックボックスの結果が機械的に並ぶのではなく、開発元が自分の言葉で書いた文章がそのまま載る欄だにゃ。
r/Steamに立った投稿は、この枠そのものへの疑問だった。新作の売れ筋一覧に並んでいたある作品のページには「AIツールは初期の発想出しを速めるために使っただけで、最終的な素材はすべて自社のアーティストが手作業で作った」という趣旨の説明が添えられていた。投稿主はそれを嘘だと断じたうえで、「ここまで堂々と虚偽を書く開発元がいるのに、開示欄には何の意味があるのか」と問いかけている。
AI開示は2024年1月に二区分へ
制度が始まったのは2024年1月。ValveはAI技術を使うゲームの扱いを変更したと発表し、提出時のコンテンツ調査にAI開示の項目を追加した。区分は2つで、開発中にAIツールの助けを借りて作られ製品に同梱される「Pre-Generated」と、ゲームの実行中にAIが生成する「Live-Generated」。後者には、違法なコンテンツを生成させないためにどんな歯止めをかけているかの説明が追加で求められる。
このとき同時に導入された通報の仕組みも、範囲は狭い。オーバーレイから報告できるのは「Live-Generatedを含むゲームの中で違法なコンテンツに出くわしたとき」であって、「この作品は開示せずにAIを使っているのでは」という申し立てを受け付ける窓口ではない。成人向けの性的表現をLive-Generatedで扱うことだけは、今も認められていない。
文面は2026年1月に書き換えられ、開発環境に組み込まれたAI機能は対象外だと明記された。現在のSteamworksのドキュメントは「これらのツールによる効率化はこの項目の主題ではない」と書き、対象を「ゲームに同梱され、プレイヤーが受け取るコンテンツ」に絞っている。アートワーク、音、物語、ローカライズなどが例に挙がっている。
同じページには「調査に回答して製品を審査に出したあと、担当チームが回答とビルドおよびストアページの中身を突き合わせる」とも書かれている。照合の工程そのものは存在する。ただ、突き合わせられるのは「書かれている内容と実物が食い違っていないか」までで、1枚の絵が生成物かどうかを外から証明する手段までは持っていない。FAQに「調査に答えさえすれば何でも出せるのか」という項目があり、答えは「いいえ」だ。開示の有無にかかわらずコンテンツ規約には従う必要がある、という念押しになっている。
枠の作りが分かりやすく出るのは、実際の文章を並べたときだにゃ。KRAFTONの『inZOI』はこう書いている。
プレイヤーはテキスト入力をもとに衣装や小物のテクスチャを生成できる。2D画像から3Dオブジェクトを作って室内装飾やアクセサリーに使うことも、動画入力からZoiに独自のモーションを追加することもできる。さらにSLM技術によって、キャラクターの行動や思考をテキストで方向づけられる。
(Steamストアページより)
続けて、制作工程とテキストのローカライズでもAIツールを補助的に使ったこと、そこで生まれたものは開発チームが確認して手で仕上げ直したことまで書いてある。何をどう使ったかが読めば分かる。


一方、Embark Studiosの『ARC Raiders』の開示欄は2文で終わっている。
開発の過程で、コンテンツ制作を補助するためにプロシージャルおよびAIベースのツールを使う場合がある。そうした場合でも、最終的な製品はわたしたち自身の開発チームの創造性と表現を反映したものになる。
(Steamストアページより)
どちらも規定は満たしている。前者を読めば何が起きるか想像できるし、後者からは何も分からない。分量も具体性も書き手まかせ、という設計がそのまま出ている。読者が受け取れるのは「開発元がそう書いた」という事実までで、その先は保証されていない。
規模の話もしておくと、開示付きの作品はもう例外ではない。Steamの公開データを集計した3年分の調査によれば、2023年7月から2026年7月までに出た53,597本のうち、AI開示が付いた割合は2024年が10.9%、2025年が19.9%、2026年は7月時点で30.8%。月あたりの本数でいうと13本前後から530本前後まで伸びていて、Steamの月間リリース数の増加分の6〜9割をこの層が占めている計算になる。売上に占める比率は本数ほど伸びていないという整理も付いていた。
そのうえで、Steamのストア検索には、AI開示のある作品を除外する絞り込み項目が今も用意されていない。開示は集まっているのに、それを使って棚を整理する手段は買う側に渡っていない。
「執行する側がいない」と西部開拓に例えられる
スレッドで最初に伸びたのは、諦めに近い一言だった。
今は無法地帯だし、これから良くなる気配も無い。
ここから西部開拓時代の比喩が転がっていく。
本物の西部開拓時代なら、少なくとも執行される法や慣習はあった。作り話のほうの西部劇なら、撃っても咎められなかった。これはそのどちらでもない。
法も慣習も確かにあった。ただ町の外へ出れば無法だっただけで。誰かが執行して初めて、法にも慣習にも意味が出る。
そこから話は「では誰が執行するのか」へ移っていく。Valve側の動機を疑う声が目立った。
金銭的か法的に困る事態にならない限り、Steamが開示を執行することも違反を罰することも無いと思う。
これに対しては、罰する気があっても手段が無い、という反論が付く。
そもそもSteamにAI使用を証明する手立てがあるのか。「AIを使っていると思われる」で削除を始めたら、使っていない開発元まで、疑われること自体を警戒しないといけなくなる。
技術で解こうという案も出たが、その場で潰されていった。
ゲームのファイルを走査して判定する仕組みを入れる手はある。ただ誤検出が大量に出るし、計算資源も無駄になって、Steam側にも開発元側にも大失敗として跳ね返る。
そうはならない。まともなエンジンを使えばコードはコンパイルされて難読化されるし、素材は独自形式に固められる。専用のツールが無いと開けないし、自社エンジンなら開けるかどうかも怪しい。
そして、判定できたとしてもなお残る問題を挙げた指摘が、議論の中では一番冷静だった。
もっと大きいのは、素材を買ったり外部に発注したりする開発元が多いことだと思う。使うつもりが無くても、知らないうちにAIで作られた素材が混じることはある。
素材市場を経由して入り込む分まで含めると、「開発元がAIを使ったかどうか」という問いは、そもそも本人にも正確に答えられないことがある。開示欄が自己申告である理由の一端は、たぶんそこにもある。
10.9%、19.9%、30.8%。枠の中身が問われる場面は、これから増えていく一方だね。
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