「追いかけっこばっかりはうんざり」ホラーゲームに欲しい要素を挙げていったら、注文は音と隠れ場所に集まった
掲示板に「ホラーゲームを作るんだけど、どんな要素がほしい?」という一行が投げられた。返ってきたのは、幽霊のデザインでもグラフィックでもなく、音の鳴らし方と、逃げ場と、説明の少なさへの注文だったにゃ。
出だしからして具体的だった。
3Dの主観視点 懐中電灯とスタミナゲージは用意した
この3点セットは、もはやホラーの標準装備に近い。『Outlast』は公式のゲーム説明でプレイヤーを「You are no fighter(お前は戦う側じゃない)」と言い切り、できるのは走るか隠れるかだけ、と明記している(Steamストアページ。日本語はテキストのみで、フル音声は英語)。走れば息が切れ、切れれば追いつかれる——スタミナゲージはその一線を引くための道具として定着した。
ただ、2026年の実物はもう一歩先にいる。2月27日に発売された『バイオハザード レクイエム』は、一人称視点と三人称視点をリアルタイムで切り替えられる作りで、視点そのものがプレイヤー側の選択肢になった。売れ行きも派手で、カプコンが公開しているミリオンセールスタイトル一覧では2026年3月31日時点で690万本(カプコン公式)。主観視点は怖さの装置として強い一方、怖すぎて進めない人を弾いてしまう——その両方を同じソフトで抱えにいった格好だにゃ。


「鬼ごっこばっかり」に飽きている

いちばん温度が高かったのは、追いかけっこへの不満だった。
追いかけっこばっかになると青鬼化するから気をつけろ
モンスターと鬼ごっこするクソゲー多すぎてうんざりする
操作をシンプルにして、お使いみたいなあれしろこれしろはやめてくれウンザリだ
追跡は作りやすい。敵を出して、走らせて、隠れ場所を置けば恐怖の形にはなる。だから量産され、飽きられた。同じ枠組みでも評価が分かれるのは、追われている時間の“濃度”のほうで、『Outlast』が今も遊ばれているのは、ロッカーやベッドの下といった隠れ場所とステルスが地形と噛み合っているからにゃ(同作は暴力表現が強めなので、そこは注意書きのとおり)。
一方で、逃走そのものを楽しくしろという方向の提案もあった。
遭遇したらダッシュで追いかけてくる 逃げてる時に手持ちのローションとかバナナの皮を地面に置いて踏めばこける
追われる時間を「耐える」から「仕掛ける」に変える発想で、これは恐怖の質を落とさずに単調さだけ抜く手としては悪くない。ただし笑いに寄りすぎると怖さが死ぬ、という綱渡りでもある。
注文がいちばん集まったのは、音
具体的で、しかも実装難度の話まで踏み込んでいたのが音だった。
環境音を視界の外から聞こえるようにしてほしい
向いてる方向に対応して音が大きくなったり小さくなったり
たまに後ろから足音聞こえてきて振り返ったら死ぬとか 逆に小さい息遣いが聞こえてきて振り返らないと死ぬとか
敵が見えないのが一番怖いってエネミーゼロっていうレトロ?ゲーで知った
音を主役に置く設計は、実際にジャンルの太い柱になっている。『Phasmophobia』は20種類以上の霊を証拠から特定していく調査型で、公式のゲーム説明にある目玉のひとつが音声認識だ。ウィジャボードやスピリットボックス越しにプレイヤーの実際の声が霊に届く——つまり、しゃべること自体がリスクになる(Steamストアページ)。2020年9月18日から早期アクセスが続いており、正式版は2026年後半を予定と公式に書かれている。日本語はインターフェース対応で、フル音声は英語のみという点は買う前に見ておきたい欄だにゃ。


「敵が見えない」の代表格として名前が挙がった『エネミー・ゼロ』は、1996年にセガサターン向けに出た作品で、姿の映らない敵の位置を音の高低だけで探る作りだった。30年前の発想が今も引き合いに出されるのは、恐怖が解像度ではなく情報の欠け方で決まる、という一点を突いていたからだと思う。
見せない、あるいは「見なければ倒せない」
見えないことの裏返しとして、見ること自体を罰にする案も出ていた。
視界に入れちゃゲームオーバーになる幽霊も追加しよう
画面から出てくるとか
プレイ中に肩を叩かれる
画面の外に手を伸ばす類の演出は、実現すると強烈だが、家庭のプレイ環境に踏み込む分だけ扱いが難しい。対して、既存作が磨いてきたのは逆側の発想だ。3月12日に発売された『零 ~紅い蝶~ REMAKE』は、2003年の第2作をTeam NINJAがフルリメイクしたもので、霊と戦う手段は「射影機」というカメラ。ファインダー越しに霊を正面から捉えないと勝負にならないという、見ることを強制する構造にゃ(Steamストアページ。日本語はフル音声対応)。


凝ったシステムはいらない、という古くて強い意見
ホラーゲームって凝ったシステムとか要らないんだよな 演出とかストーリーのセンスの方が大事なジャンル
冗長な説明とか解説セリフなしにして解らないから怪異、みたいな感じ
ミステリ的な謎解きは欲しいな 何で呪われてるのか?みたいな
説明しすぎると怪異が事務手続きになる、という指摘は鋭い。ただ、まったく分からないままだと今度は謎解きの取っ掛かりが消えるので、両立させた作りが評価されやすい。2025年9月25日発売の『SILENT HILL f』は1960年代の日本を舞台にしたサイコロジカルホラーで、コナミの発表によれば発売から数日の9月29日時点で全世界累計出荷100万本を突破した(コナミデジタルエンタテインメント)。物語と世界観の強度が、そのまま数字になったタイトルにゃ。
供養の形を目的にする案も出ていた。
幽霊の生前の思い出の品を集めると成仏
これは実質、収集要素と物語の答え合わせを同じ動線に乗せる設計で、「なぜ呪われているのか」という問いへの回答をアイテム側に持たせられる。お使い嫌いの声とも矛盾しないのは、集める理由が最初から怖さの説明になっているからだろう。
スマホで助けを求める、路上の婆ちゃんに助けられる
道具立てを現代に寄せる案も面白かった。
スマホ snsで対策を教えて貰いながら生き延びる
路上に座ってる不気味なホームレスみたな婆ちゃんは実は凄腕の霊能者で話しかければ助けてもらえる 的な裏ワザ
スマホ画面だけで進行するホラーはすでにジャンルとして成立していて、行方不明の女性の端末を覗き込む形で進む『SIMULACRA』が代表例(2017年配信。Steamストアページでは日本語非対応で、英語と簡体字中国語のみ)。通知が来る、既読がつく、返事が来ない——普段使っているUIをそのまま恐怖の器にする手口にゃ。
そして最後に、こんな声も混じっていた。
夕闇っぽいヤツ出ないかなぁ
死んだら萎えるからお化け屋敷風にしよう
製作中に製作者が謎の死をとげる
ひとつめは、90年代末の学校の怪談ものが持っていた空気を懐かしむ声。ふたつめは、死亡ペナルティが恐怖を削ぐという実感の話で、実際に一本道の体験型ホラーが増えた背景と重なる。みっつめは、まあ、ゲーム内の要素ではないにゃ。
並べてみると、要望の芯はだいたい一致していた。追われる時間を短く濃くして、音で位置を語り、説明を減らす。 30年前のセガサターンの一本から今年のリメイクまで、評価されてきた作品がやってきたことと、ほとんど同じ場所を指していた。
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