Steamの生成AI申告ゲームは推奨率68.4%、50万件のレビュー解析で分かれた「使い道」
推奨率86.3%と、68.4%。前者はプロシージャル生成(PCG)を使ったゲーム、後者は生成AIの利用をストアページで申告したゲームの数字だよ。Steamのレビュー50万件超を突き合わせたら、17.9ポイントの開きが出てきた。
ノースイースタン大学のMahsa BazzazとSeth Cooperが8月12日にarXivで公開した論文「Player Perceptions of Generative AI in Games: A Steam Review Analysis」による集計。ただ、この論文で面白いのは差の大きさそのものより、その差が「AIを使ったかどうか」には還元されなかったところにある。
自動生成PCGを対照群に設定

生成AIへの反発を扱った調査はいくつもあるけど、この研究がやったのは対照群の設定だね。プロシージャル生成は何十年も前から使われてきた自動生成の技術で、Steamにも「Procedural Generation」のタグがある。ローグライクの地形もサンドボックスの世界も、中身をコンピュータが作っている点では生成AIと変わらない。それなのに片方は当たり前に受け入れられ、片方は炎上する。その落差を測るための基準線としてPCGを置いた。
対象はPCGタグの5,186本(レビュー341,447件)と、生成AI申告のある5,970本(166,745件)。合わせて508,192件の英語レビューを、DistilBERTによる感情分析とSteamの推奨ボタンの両方で見ている。ポジティブと判定されたレビューの割合はPCGが69.0%、生成AIが53.0%だった。
申告付きタイトルの増え方も出ている。2023年のリリースでは0.7%、2024年は5.6%、2025年は10.3%。Valveが申告欄を設けたのは2024年1月なので、制度ができてから2年足らずで10本に1本まで来たことになる。ストアのホーム画面が申告付きの量産タイトルで埋まるという不満は、海外の掲示板でも繰り返し噴き出していた。
もうひとつ、申告付きは無料タイトルの比率が22.4%(PCGは12.5%)、平均価格も10.23ドル対14.70ドルと安い。売られている場所そのものが違う。
無料タイトルは33ポイント差
全体の17.9ポイント差を条件ごとに割ると、内訳がかなり偏っていた。
基本プレイ無料のタイトルで比べると、PCGが83.1%に対して生成AIは50.1%。33ポイントの開きになる。ところが有料タイトルに絞ると86.9%対78.9%で、差は8ポイントまで縮む。金を払ったかどうかで、同じ申告に対する当たりの強さが変わっている。
早期アクセスも効いていた。生成AI側の推奨率は早期アクセス中が77.8%、製品版として出ているものが65.7%。「まだ作っている途中」という枠に入っていると、AI素材はかなり許される。
プレイ時間の差も大きい。レビュー投稿時点のプレイ時間の中央値は、PCGが370分に対して生成AIが148分。2時間未満のレビューを除外すると、生成AI側の推奨率は10.4ポイント上がった。要するに、短時間で見切って低評価を付ける層が数字を押し下げている。低評価ほど短いプレイ時間で書かれるという傾向は、1500万件規模のレビューを解析した別の研究でも出ていたものだね。
ジャンル別ではアクションが27.5ポイント、RPGが22.1ポイント、ストラテジーが18.6ポイントと差が大きく、逆にアドベンチャーは2.3ポイント、シミュレーションは1.6ポイントとほぼ横並び。同じ申告でも、ジャンルによって受け取られ方がまるで違う。
レビュー600件を5類型に分類
数字の次に、AIへの言及があるレビュー600件を3人で読んでコードを付けている(コーダー間一致はKrippendorffのα=0.920)。出てきたのは5つの型。
品質そのものへの不満が最も多い。「急ごしらえ」「手抜き」といった語で語られ、指の数が合わない絵、抑揚のない合成音声、意味の通らない翻訳が具体例として挙がる。厄介なのは波及で、素材のどこか一箇所でAIらしさが見つかると、人間が作った部分まで疑われはじめる。
原理的な拒否は品質と切り離されている。アーティストの仕事が奪われること、学習データの出どころ、この手法が業界の当たり前になること。面白かったと書いた上で低評価を付け、それを消費者としての意思表示だと明言している人もいた。
受け入れている側の条件もはっきりしていた。人の作業を置き換えるのではなく補助として使われているとき、AIそのものが遊びの仕組みになっているとき(会話がその場で生成されるNPCなど)、そして早期アクセスで仮素材だと示されているとき。
透明性については、申告の内容と実物のズレを見つけて怒るパターンが目立つ。Wayback Machineで過去のストアページを掘り返して確認していた例まである。中途半端に隠すほうが、最初から全部書くより信用を失っていた。
そして少数ながら、AIを使っていないことへの批判もあった。翻訳が粗い、音声が素人臭い、道具があるのになぜ使わないのか、という声だね。求められる水準のほうが動いている。
同じ2人は今年4月のCHI '26で、別の角度からこれを確かめている。『Super Mario Bros.』と『Sokoban』のステージを人間製とPCG製で混ぜて遊ばせ、どちらが作ったかを当ててもらう実験だ(Playing the Imitation Game)。
結果は、参加者は作者を確実には言い当てられなかった。にもかかわらず評価は自分の推測にきれいに連動していて、「人が作った」と思ったステージは楽しく美しいと評価され、「AIが作った」と思ったステージは苛立たしく難しいと評価された。実物の出来ではなく、作り手についての思い込みのほうが体験を決めていたわけだにゃ。
Steamのレビュー解析の結論も、そこに接続する。著者らは、PCGと生成AIの受け取られ方の差は技術の違いではなく、開発者の意図がどう読まれるかの違いだと書いている。PCGはリプレイ性や偶発性というプレイヤー側の利得から出発した設計思想だったのに対し、生成AIはまず制作コストの側から入ってきた。だから成功には「開発を安くするためではなく、プレイヤーが必要としていることのために生成AIを配置すること」が要る、というのが論文の締めくくり。
PCGが当たり前の道具として扱われるまでには何十年もかかっている。Steamに申告欄ができてからは、まだ2年半あまりだ。
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