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ソニー、PSストア訴訟で「デジタルに所有はない」と反論 ― 根拠は『バイオ レクイエム』2件の購入

投稿: 2026/09/01by tobariware8分で読めます
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連邦地裁に出された書面に、『バイオハザード レクイエム』の購入記録が2行だけ引かれている。2月14日に1人、2月25日にもう1人、どちらも69.99ドル。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)はこの2行を、「デジタルゲームを買った人が所有権を得たと信じていた」という訴えが成り立たないことの証拠として持ち出した。先に買った側が本当に所有していたなら、11日後に別の人が同じものを買えるはずがない——という組み立てだね。

発端は6月18日。カリフォルニア州在住の4人が、PlayStation Storeの表示は不当だとしてカリフォルニア北部地区連邦地裁に集団訴訟を起こした。訴状によれば、争点は「Buy Now」「Confirm Purchase」という表示そのもの。実際に手に入るのは取り消し可能なライセンスにすぎないのに、物を買い切ったかのような言葉づかいで決済まで運んでいる、という主張だ(訴状PDF)。

これに対してSIEが8月21日に出したのが、仲裁への移送、あるいは訴え却下を求める書面。その中の「合理的な消費者なら誤認しない」というくだりで、冒頭の2行が出てくる。

デジタルの時代に、合理的な消費者がデジタルゲームの「所有」を得ていると信じていた、と主張するのは筋が通らない。もしそうだったなら、メンドーサ氏が2月14日に『バイオハザード レクイエム』を入手した後で、ヘイコック氏が2月25日に69.99ドルで同じ作品をPlayStation Storeから入手できたはずがない。ソニーではなくメンドーサ氏がそれを所有していたことになるからだ。

SIE提出書面 12ページ)

書面はさらに、オンラインで対戦する相手も同じゲームを持っている必要がある以上、「入手した人がその作品の排他的な所有者になる」と考える消費者がいるとは考えにくい、と続けている。

面白いのは、引き合いに出された2件の日付。『バイオハザード レクイエム』の発売日は2月27日で、予約受付は2025年10月30日に始まっていた。つまり法廷で「2人が同時に所有することはできない」証拠として並べられたのは、どちらも発売前に確保された予約分ということになる。

州法17500.6条は「買う」という表示に条件を付けている

訴えの土台になっているのは、2024年に成立して2025年1月から動いているカリフォルニア州の法律AB2426。州の虚偽広告法に17500.6条を足したもので、対象はデジタルアプリ・ゲーム・音楽・映像・電子書籍といった「デジタルグッズ」全般だよ。

内容はかなり具体的で、アクセスが後から取り消されうる商品について「buy」「purchase」のような、普通に読めば無制限の所有権を渡すと受け取れる語を使う場合、売り手は次のどちらかを踏まなければならない、と定めている(州議会の法案テキスト)。

  • 選べる方式 / 求められること
  • 明示の承認を取る: ライセンスを受け取るだけであることを購入者に確認させ、制限事項の一覧と、権利を失えばアクセスも取り消されうる旨を示す
  • 明確な表示を置く: 平易な言葉でライセンスであると述べ、全条件へのリンクやQRコードを添える

しかもこの表示は「ほかの条項とは区別された別個のもの」でなければならない。定額サービス、無料の商品、そしてネット接続なしで使える形で外部ストレージへ恒久的にダウンロードできるものは、この規定の外に置かれている。

原告側は、PlayStation Storeの決済画面にライセンスへの言及はあるものの、周りに比べて小さい文字で、特に目立たせる作りにもなっておらず、チェックボックスで別途確認させてもいない、と訴えている。

SIE側の答えは真っ向から逆。アカウント作成時に規約への同意が必要で、購入確定ボタンの上には「このデジタル商品の購入がソフトウェア製品使用許諾契約に基づくライセンスであることを了承する」旨の文が出る。規約8.4条は「PlayStation Storeで商品を注文・購入した場合、私的かつ非商用の利用のための個人ライセンスを買うことになる。商品を所有するわけではない」と書き、10.1条は「本契約やコンテンツに関して『所有』『購入』『販売』『買う』といった語を使っても、所有権の移転を意味しない」と念を押している。使用許諾契約1条に至っては「本ソフトウェアはあなたにライセンスされるものであって、販売されるものではない」の一文。だから17500.6条のいう明確で目立つ開示は満たしている、という主張だ。

ソニーが最初に求めているのは、仲裁への移送

見落としやすいけれど、この書面の本命は所有権論ではない。SIEが第一に求めているのは、規約14条の仲裁条項とクラスアクション放棄に従って、争いを個別の仲裁へ回して裁判を止めることだ。原告4人はいずれも2024年4月22日か23日に更新後の規約へ同意しており、30日間のオプトアウト期間に誰も離脱しなかった、と書面は指摘している。

却下を求める予備的な主張のほうも、実損害の不在に軸足がある。原告は誰ひとりゲームへのアクセスを失っておらず、動かなくなった作品も挙げていない。むしろ数年にわたって何本も買い続けてきた顧客であり、「ライセンスだと知っていればもっと安く買えたはずだ」という価格上乗せの主張にも、比較対象の提示がない——そういう組み立てになっている。17500条・17500.6条には独立した私的訴権がない、という指摘も添えられている。

なお被告はいまSIE1社だけ。もう一方のソニー・コーポレーション・オブ・アメリカについては、8月20日に原告側が取り下げている。

仲裁に回すかどうかを判断する審理は、Vince Chhabria判事のもとで10月2日午前2時に予定されている。ここで仲裁が認められれば、冒頭の「2人が同じ作品を買えた」という理屈は、法廷では最後まで検討されないまま終わる可能性もある。

この議論が重く感じられるのは、周りの状況が同じ方向へ動いているからだと思う。ソニーは7月1日、PlayStation向けの新作について物理ディスクの生産を2028年1月で終えると発表した。それ以降に出る新作は、店頭で買う場合もデジタルのみ。すでに出ているディスクや、2028年1月より前に発売される作品には影響しない、とも明記されている。

同じ日にはPS3とPS Vita向けストアの閉鎖も告知された。メキシコ・ホンジュラス・ニカラグアのPS3ストアが2026年8月、一部の中南米・中東地域が2026年後半、それ以外の地域は2027年7月に順次閉じる。購入済みのコンテンツは閉鎖後も「当面のあいだ」再ダウンロードできる、という書き方になっている。

ソニーを相手取ったデジタル所有権の争いは、オランダでも別に進んでいて、ゲーム保存運動の側がそちらを後押ししている。

📄 Stop Killing Games、ソニー集団訴訟に合流 ― オランダ発「デジタル独占」問題

10月2日の審理でまず決まるのは、ゲームを買うという行為が何を指すのかという話が、公開の法廷で続けられるのか、それとも非公開の仲裁室へ移されるのか——その一点になる。

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