熱狂は続かなかった――VRゲーム『失速』の正体を、数字とユーザーの声で追う
2016年、Oculus Rift と PlayStation VR が相次いで店頭に並んだとき、「これで"次の時代"が来る」と本気で信じた人は少なくなかったはずにゃ。ヘッドセットをかぶれば、画面の"向こう側"に立てる――そんな未来がもうすぐそこにある気がした。
それから10年。あるゲーム系の掲示板に「VRゲームって、あれからどうなったの?」という、拍子抜けするほど素朴なスレッドが立って、驚くほど多くの本音が集まっていた。スレ主いわく、「RiftやPSVR1にあれだけ興奮したのに、`Bonelab` や `Half-Life: Alyx` のあと、VRの大作をほとんど見かけなくなった」。
この"あれ以来、大作が途切れがち"という感覚と、実は「ハードは着実に売れている」という事実。そのねじれこそが、今のVRを語るうえでいちばん面白いところにゃ。数字を一つずつ並べて確かめてみたにゃ。
Alyxで打った天井

VR専用の超大作、という一点で今も語り草なのが、2020年3月23日に発売された Valve の 『Half-Life: Alyx』。シリーズ久々の完全新作を、まるごとVRで作り込んだ意欲作で、Steam のレビューは10万件超で「圧倒的に好評」を維持している。
続く2022年には物理演算の遊び場『BONELAB』が出て、界隈を沸かせた。ただ――多くの人が"あの熱量"の記憶をこの2本で止めているのも事実で、以降、これらに匹敵する規模のVR専用大作が毎年のように出てくる流れにはならなかった。ここが、体感的な"失速"のいちばんの震源地にゃ。
「売れていない」わけではない、という反論
面白いのは、掲示板でも「そもそもVRは売れていないのか?」で意見が割れていたこと。実際の数字を見ると、"廃れた"の一言では片づかない。
Meta の Quest シリーズは累計でおよそ2,000万台に迫る規模まで出荷されている。そして Steam に接続されているVRヘッドセットの内訳(Steam ハードウェア・ソフトウェア調査、2026年6月時点)を見ると、上位はほぼ Meta の独占状態にゃ。
| ヘッドセット | Steam接続シェア(2026年6月) |
|---|---|
| Meta Quest 3 | 約27.98% |
| Meta Quest 2 | 約23.54% |
| Meta Quest 3S | 1割強 |
| Valve Index | 約11%(直近の公表値) |
つまり「PCにつないで遊ばれているVR機」の主役ですら Quest だ、という構図。ハードそのものは決して死んでいない。
ただ、ここに大きな注釈が付く。Quest の多くはPCにつながず、単体(スタンドアロン)で完結して使われているという点にゃ。PCVRの大作が育ちにくいのは、この"母数はいるのに、PCゲームとして遊ぶ層はその一部"という薄まり方が効いている――というのが、数字とかみ合う見立てにゃ。
なお掲示板では「Quest 3 は150万台程度しか売れていない」といった具体的な数字も飛び交っていたけれど、Meta は機種ごとの販売台数を公式には細かく開示していない。個別の"○○万台"はユーザー間の推計として受け止めておくのが安全にゃ。
Metaが流した血と、Sonyの後退、そしてValveの一手
VRの空気が重くなった背景には、旗振り役だった各社の"疲れ"もある。
Meta の Reality Labs 部門は、2020年終盤以降の累計赤字が700億ドル近くに達し、2024年単年でも約177億ドルを溶かしている。掲示板でも指摘があったとおり、同社の関心が"メタバース"から生成AIへと露骨に移ったのも、この出血と無関係ではないだろうにゃ。
Sony も、2023年2月に投入した PlayStation VR2 が伸び悩み、2025年には世界的な値下げに踏み切っている。PC接続用アダプターを出して間口を広げようとした動きはあるものの、"PS5の目玉"として押し切る勢いは、もうそこにはない。
そんな中で、次の焚き付け役として名前が挙がるのが Valve の新型スタンドアロン機 Steam Frame。2025年11月に発表された、SteamOS を積むARM単体駆動のヘッドセットで、PCからの映像ストリーミングにも対応する。発売時期は2026年夏とされ、量産も始まっているとみられるものの、本稿執筆時点で正式な価格は公表されていない。過去に Meta ですら補助金付きの安値でも普及の壁を越えられなかっただけに、"価格"がまた勝負どころになりそうにゃ。
Redditの反応
ここからは、実際にスレッドへ集まった声を少しだけのぞいてみるにゃ。賛否も切り口もバラバラで、これがなかなか読ませる。
まず、市場の"小ささ"を冷静に見る声。
ヘッドセットが必須という時点で、そもそも普及台数が大きくなりようがなかった。VRには今も熱心なファンがいるけど、市場としてはかなり小さい。Steam Frameがそこを変えられるか、お手並み拝見だね。
「売れていない」への反論も、すかさず飛んでくる。
Questが失敗したとは思わないよ。何百万台も売れてる。ただ、その大半がPCVRじゃなく単体で使われてる、ってだけの話だ。
一方で、世代交代のつまずきを突く声も。
Quest 2は2,000万台くらい売れたのに、3は150万台くらい。かけた研究開発費を考えたら、今のところ完全にコケてると言っていい。
VRを過小評価しすぎ、という逆張りも根強い。
みんなVR市場を軽く見すぎだよ。Quest 2はXbox Series Sより売れたはず。しかもそれ、Quest 2"だけ"の数字だからね。
"なぜ盛り上がりが続かなかったか"では、価格とタイミングを挙げる指摘が刺さっていた。
300ドルと500ドルの差は大きいし、コロナ禍で「家でできること」を探してた時期に出たのも効いた。Quest 3を買うような層は、もう2を持っていて満足してるか、そもそも使わなくなってるんだよ。
コロナ禍に出た、ってのは過小評価されがちな点だと思う。まさに自分がそうで、もう何年もヘッドセットに触ってない。
そして、Meta自身の"腰の入り方"を疑う声。
Metaがあの寒いメタバース路線を押し付けようとした時点で、もう見切りをつけたんだと思う。今は持てるリソースを全部AIに突っ込みたいんじゃないかな。
数字を並べて分かるのは、VRは"廃れた"というより、熱狂の期待値がいったん現実の温度まで下がって、静かに定着したという姿にゃ。ハードは売れている、でも据え置き機のような"毎年の大作ラッシュ"にはならなかった。その落差が、「最近聞かないな」という肌感覚の正体だったわけにゃ。次の温度を決めるのが Steam Frame になるのか――そこは、値札が出てからのお楽しみにゃ。
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