『アークナイツ:エンドフィールド』の絵作りはUnityの心臓部を入れ替えて成立──開発陣が技術解説
キャラを4人まとめて動かして、背景には自分で建てた工場がずらっと並んで、それでも遠景の影までちゃんと落ちている。1月22日に配信が始まった『アークナイツ:エンドフィールド』の画面を見て「これ、どうやって動かしてるんだ」と思った人は多いはず。その中身が、7月21日にソウルで開かれたUnityの開発者向けカンファレンス「Unite Seoul 2026」で、開発元HYPERGRYPHのシニアテックディレクター本人の口から説明されたにゃ。
セッション名は「ランタイムレンダリングフレームワークの再構築」
登壇したのはHYPERGRYPHのWill Fei氏。会場はソウル・COEXで、枠は14時40分からの40分、難易度表記は「上級」という、かなり硬派なセッションだった(Unite Seoul 2026 公式アジェンダ)。テーマはずばり、大規模なコンテンツ制作とマルチプラットフォーム対応のために、ランタイムの描画基盤をどう作り直していったか。
残したのはエディターとツール、差し替えたのは描画のど真ん中
エンジンはUnityだが、そのまま使っているわけではない。基本構成・エディター・制作ツールは活かしつつ、内部のコアな部分は作り直す、という判断が取られている。レンダリングパイプラインもUnity標準のURPやHDRPではなく、C#スクリプトを経由するオーバーヘッドを避けるためにC++でネイティブに実装したものが走っている。
「汎用エンジンの便利なところは残して、重い処理は自前で持つ」という、いいとこ取りの構えにゃ。
セッションで示された柱は4つ。
- 独自にカスタマイズしたECS(データ指向のコンポーネント基盤)
- カリング・ソート・バッチングの最適化
- C++のレンダーパイプラインとレンダーグラフ
- 低レベルのデバイス抽象化レイヤー
ECSは、毎フレーム数万規模の描画対象を捌くために、汎用のものを土台から手直ししたという。実行時の柔軟さのために残されている型情報の参照やハッシュ探索をコンパイル時に固定してしまい、メモリはチャンク単位のSoA(構造体の配列ではなく配列の構造体)で持つ。要素の削除も、末尾と入れ替えて捨てる方式でまとめて処理する。細かい話に見えるけれど、これが積み上がって毎フレームの余裕になる。
60万から6万へ、バッチングは1ミリ秒
数字が出てきたのがカリングまわり。1フレームに10〜20種類のビュー(メインカメラ、各種の影、その他)を統一の仕組みで処理し、GPUで作った低解像度の深度バッファを使ったソフトウェアオクルージョンカリングで、手前の物に隠れた対象を先に落とす。
| 環境 | 描画候補 | 絞り込み後 | バッチング処理 |
|---|---|---|---|
| PC | 約60万 | 約6万 | 約1ms |
| モバイル(Snapdragon 8 Gen 1) | 約50万 | 数万 | 約3ms |
さらに描画順を決めるソートキーは16バイト単位から64ビット単位へ設計し直し、Vulkanのディスクリプタセットを動的オフセットで使い回すことで、フレームごとのメモリ確保をゼロにしている。デバイス抽象化そのものも、レンダーパスやバリアを手で明示するVulkan寄りの考え方を下敷きにして引かれているという。


キャラ1体10万ポリゴン、影は遠景まで落ちたまま
そこまでして削りにいく理由は、載せている物が単純に重いから。
| プラットフォーム | キャラ1体あたりのポリゴン数 |
|---|---|
| PC・コンソール | 約8万〜10万 |
| モバイル | 約4万〜5万 |
これが常時4人。加えてプレイヤーが好き放題に建てる工場設備が景色を埋め、遠くの山の輪郭まで視界に入る。多くのゲームが遠景の影をフェードさせて逃がすところを、エンドフィールドは近景・中景・遠景を通して動的なライティングと影を維持している。トゥーン調のNPRと、物理ベースのPBRを混ぜた絵作りも、この土台の上に乗っているというわけにゃ。
iPhoneでは熱と相談しながらレイトレーシングまで

モバイル側の作り込みについては、Appleの開発者向け記事でも同氏がコメントしている。約4年の開発期間のなかで、描画パイプラインとグラフィックスの抽象化レイヤー、ECS基盤を自前で組み、性能と発熱の厳しい制約のなかでレイトレーシングを成立させたこと。そして最適化を開発の最後に回さず、アセットがエンジンに載る前の段階から基準を効かせていること(Apple Developer)。
「まずプレイヤーの視点に立つ。どんな機能もシステムも、出す前に自分たちで触って、しっくりくるまで直す」という趣旨の言葉も残している。技術の話に見えて、結局は手触りの話に着地しているのが面白いところにゃ。
ゲーム本編は現在、7月16日配信の大型バージョン「向淵行」が動いている最中。以前くわしく紹介したので、中身が気になる人はそちらもどうぞ。
汎用エンジンを使いながら、必要な場所だけ自分たちの手で置き換えていく。派手な新情報ではないけれど、あの画面が何でできているのかが分かると、次に起動したときの見え方がちょっと変わるはずにゃ。作品の最新情報は公式サイトから確認できる。
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