ソニー「デジタルゲームの所有は成り立たない」と法廷で主張、公式サイトの「you own」表記が続々発掘
「デジタルの時代に、合理的な消費者がデジタルゲームの『所有権』を得ていると信じていた、という主張は成り立たない」。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が米カリフォルニア州北部地区連邦地裁へ出した8月21日付の申立書には、そう書かれている。
この一文に返ってきたのは、反論ではなく収集作業だった。ソニー自身が運営する公式ページを片っ端から開き、「you already own(あなたが既に所有している)」「games you own(あなたが所有しているゲーム)」と書かれた箇所を文言ごとURLと一緒に並べていく——consumerrights.wiki にまとめられたその一覧が Reddit の r/gaming に持ち込まれ、大きく伸びた。並んでいる引用は数十件。どれもソニーのドメインから拾われたものにゃ。
4人が訴えたのは「購入」ボタンの表示だった
訴えが起こされたのは6月18日付。カリフォルニア州に住む4人が、SIEと親会社のソニー・コーポレーション・オブ・アメリカを相手にクラスアクション(集団訴訟)を提起した(訴訟記録・事件番号3:26-cv-06016、担当はヴィンス・チャブリア判事)。8月20日付で親会社は対象から外れ、いま争っている相手はSIE一社に絞られている。
主張の中心にあるのは、ゲームの中身ではなく決済画面の文字。PlayStation Storeのボタンには「購入」と書かれ、確定の画面でも「Confirm Purchase」と出る。ところが実際に手渡されるのは取り消し可能なライセンスでしかない——その落差が、カリフォルニア州のAB 2426(同州ビジネス・専門職法17500.6条/2025年1月1日施行)に反すると訴えている。この法律は、デジタル商品を「buy」「purchase」のように無制限の所有を思わせる言葉で売るなら、(1) ライセンスであることと制限内容を買い手にはっきり確認させるか、(2) 購入前に平易な言葉で「これはライセンスだ」と分かるよう表示し、規約へのリンクかQRコードを添えるか、そのどちらかを義務づけるもの。原告側は、Storeの注意書きが小さく目立たない文字で置かれているだけで基準を満たしていないと言う。
SIEの申立ては二段構えになっている。まず利用規約の仲裁条項を盾に「集団訴訟ではなく個人ごとの仲裁へ回せ」と求め、そのうえで訴えそのものの却下を求めた。書面には「合理的な消費者は誤解しない(Reasonable Consumers Would Not Be Misled)」という見出しが立ち、同じタイトルを何万人もが同時に買える以上、そこに排他的な所有はあり得ないという理屈が続く。原告側は9月4日付で反論を提出し、SIEは9月11日付で再反論。書面はすでに出そろい、審理は10月に予定されている。
規約は「撤回可能なライセンス」、公式ページは「you own」と書いている
規約の文言だけ見れば、ソニーの言っていることは昔から一貫している。PlayStation利用規約の10.2条は「本契約に定める場合を除き、PlayStationを通じて提供されるすべてのコンテンツは、非独占的かつ撤回可能な形で、個人的・私的・譲渡不可・非商用の限定的な利用のためにライセンスされる」。日本語版(第17版・2026年4月)も7.2条で「非独占的かつ撤回可能な形式でライセンスされています」と書き、6.2条では決済後の取り消しに応じないと明記している。
厄介なのは、規約の外側。同じ会社の公式ページを開くと、「所有」の言葉があちこちに置かれている。
| ソニーの書き方 | 載っているページ |
|---|---|
| an eligible digital PS4 game you already own(あなたが既に所有している対象のデジタルPS4ゲーム) | PS4ゲームをPS5版へアップグレードする手順 |
| an eligible digital game you already own | PS VR2版へのアップグレード手順 |
| Digital PS5 games you own / total play time, games you own and more | PS5の製品ページ |
| Existing owners of Horizon Zero Dawn (PS4) … can upgrade | Horizon Zero Dawn Remastered |
| Standard Edition owners can also upgrade / Every review comes from a verified owner | Marvel's Wolverine |
| If you already own a PS4 version of Ghost of Tsushima | Ghost of Tsushima Director's Cut |
最後の「verified owner(確認済みの所有者)」はレビュー欄の注記で、同じ場所に「このゲームの所有者だけが評価できる」とも書かれている。レビューの信頼性を担保する根拠として「所有」を持ち出している形にゃ。
ただし、この一覧が裁判の勝敗を決めるわけではない。ヘルプ記事や商品ページの文言は契約書ではないし、いくら集めても規約の条項が書き換わるものでもない。効くとすれば「表示が誤解を招くかどうか」を争う局面で、同じ会社が別の場所で何と書いてきたかは、無視しにくい材料として残る。
Redditの反応は「契約か、広告か」で割れた
r/gaming でまず目立ったのは、法的な線引きを冷静に引く声だった。
マーケティングのメールや広い告知は、法的拘束力のある契約ではない。PSNで決済するときに同意する利用規約や、ゲームを起動した瞬間に突き出されるあれが契約だ。ただ、誤解を招く広告として訴えることはできる。
これにはすぐ返しが付いた。
2つある。EULAは確かに法的拘束力のある契約だ……でも契約は検証を免れるものじゃない。違法な条件を入れても法廷では通らないし、契約の内容を偽って伝えないことも求められている。これだけ逆のことを言う公開発言があるなら、なおさら。
一方で、勝っても欲しいものは手に入らないと冷や水を浴びせる人もいる。
EULAの面倒な部分を全部よけて、仮にそちらの言う通りだとしても、結果として「ゲームを所有できる」ようにはならない。相変わらずデジタルのライセンスのままで、ソニーが「何を買っているのか」について客を誤解させた件で咎められる、というだけ。
いちばん盛り上がったのは、法律の言う「合理的な人(reasonable person)」の中身をどう考えるかという点。
問題は「合理的な人」と言っているところ。合理的な人がデジタルストアを見れば、ボタンには借りるでもリースでもなく「BUY」と書いてある。合理的な人はBuyの意味を分かっている。所有するために買うということだ。Amazonにはレンタルと購入の両方が並んでいる。
法廷の用語は、普段の言い方と一致するとは限らない。典型は「assault」で、法廷では暴力そのものではなく暴力の脅しを指す。
後者の人は「法的に『ゲームを所有する』と言えば知的財産そのものを所有する意味になる」とも続けているけれど、ここはやや乱暴。手元のコピーの所有と著作権の保有は別の話で、そもそも今回の訴訟は所有権の有無を確定させるものではなく、売り方の表示がAB 2426の基準を満たすかどうかを問うている。
決済画面の注意書きを持ち出した人もいた。
EULAとは別に、ソニーもSteamと似たメッセージを「購入を確定する」ボタンの上に出している。確定を選ぶことで、このコンテンツを使う前にPlayStation利用規約に従って購入を完了することに同意する——という文面だ。
そして合理的な人は、それを読むことを期待されていない。:)
やり取りが落ち着いたのは、この裁判で何が変わるのかという話題。
それでも、ソニーがアカウントをBANしたときに何かしら手立てが残るなら、そこは意味がある。
できればね。でも、この裁判だけでそこまで辿り着くとは思えない。
長い道のりになる。
PS5の製品ページに置かれた「Digital PS5 games you own」という一行は、申立書が出たあとも、まだ書き換えられていない。
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